THR(宗教祝日手当)——インドネシアで働く人全員に支払われる法定ボーナスの仕組み
インドネシアのTHR(Tunjangan Hari Raya)は法律で定められた宗教祝日手当で、雇用主は宗教の祭日前に必ず支払う義務がある。外国人労働者への適用と計算方法を解説する。
この記事の日本円換算は、1万IDR≒96円で計算しています(2026年5月時点)。為替は変動するので、現地通貨の金額を基準にしてください。
インドネシアで仕事をしていると、ラマダン(断食月)の終わりが近づくにつれて職場の雰囲気が変わってくる。同僚が帰省の準備をし、交通機関の混雑が始まる。その前に振り込まれるのが「THR(Tunjangan Hari Raya)」——日本語に直訳すれば「宗教祝日手当」だ。
THRとは何か
THRはインドネシアの労働法に基づく法定手当で、宗教的な祝日(各宗教の主要祭日)の7日前までに支払うことが雇用主に義務付けられている。
金額の基準:
- 勤続1年以上:月額基本給の1か月分
- 勤続1年未満:勤続月数÷12×月額基本給
イスラム教徒のレバラン(イドゥル・フィトリ)前が最も大きな支払い時期だが、クリスチャンはクリスマス前、ヒンドゥー教徒はニュピ(バリのヒンドゥー新年)前というように、宗教に応じた時期に支払われる。
外国人労働者への適用
インドネシアで正式な就労ビザ(KITAS・KITAP)を持って雇用契約を結んでいる外国人は、THRの対象になる。雇用主が外国人であることを理由にTHRを払わないことは違法だ。
ただし、「外国人だからTHRはない」と説明する雇用主も稀にいる。契約書を確認し、必要に応じて労働省(Kemenaker)に相談する選択肢がある。
市場・経済への影響
THRが支払われるレバラン前の時期は消費が急増する。モールのセールが始まり、家電・衣料・食品の売上が跳ね上がる。インドネシアの消費関連企業にとって、THRシーズンは1年で最も重要な商戦期のひとつだ。
交通費・帰省費用にTHRを使う労働者も多く、ジャカルタから故郷に送金が集中する時期でもある。送金サービス(Wise、GoPay等)のトランザクション量がこの時期に増える。
会社側の視点
中小企業にとってTHRの支払いはキャッシュフローへの影響が大きい。全従業員分を一度に支払う必要があるため、事前の資金繰り計画が必要だ。政府は毎年THRの支払い遵守状況を監視するタスクフォースを設置し、違反企業への指導を行っている。
在住者として知っておくこと
インドネシアで現地採用(ローカル雇用)で働く場合はTHRの計算方法と支払い時期を雇用前に確認しておくといい。また、THR支払いシーズン前後は市場や交通が混雑するため、大きな買い物や旅行の計画には影響が出る場合がある。