パーム油大国なのに揚げ油が品切れになった——2022年のインドネシアの食用油危機
2022年初頭、世界最大のパーム油生産国インドネシアで食用油が店頭から消えるという逆説的な事態が起きた。その背景と現在のパーム油を巡る政策・生活への影響を解説する。
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世界のパーム油生産量のうちインドネシアとマレーシアの2カ国が大部分を占める(推計によって割合は異なるが、圧倒的なシェアを持つことは確か)。インドネシアはその最大の生産国だ。ならば、インドネシアの家庭で揚げ油が品切れになるなど普通ありえないはず——そう思うのが自然だろう。しかし2022年の初頭、それが実際に起きた。
なぜ食用油が消えたか
2021年後半から2022年にかけてウクライナ危機の影響もあり、国際的な植物油(ヒマワリ油含む)の価格が上昇した。パーム油の国際価格も高騰し、インドネシアの業者が国内向け販売より輸出に回したほうが利益が大きくなる状況が生まれた。
政府が食用油の価格上限(HET: Harga Eceran Tertinggi)を設定したが、業者は価格上限以下では販売したくないため、事実上の品薄・在庫隠しが起きた。スーパーの食用油売場が空になり、露天市場でも品切れが続いた。
政府の対応と結末
インドネシア政府はパーム油輸出の一時禁止令を発令する異例の措置を取った(2022年4月)。業界団体からは強い反発があったが、国内食用油の供給確保を優先した。
禁輸措置は数週間〜1カ月程度で解除されたが、この一連の騒動はインドネシアが「自国で生産する資源の最大の消費者になれるとは限らない」という資源輸出国特有の矛盾を示した。
パーム油と在住者の日常
インドネシアで料理をすると、市販の食用油は大半がパーム油またはその混合油だ。サラダ油のようなクセのない植物油を探すと、オリーブオイルは輸入品で高額になる。
インドネシアの料理(イカン・バカル、テンペ揚げ、ナシ・ゴレン等)は揚げ物・炒め物が多く、家庭での油消費量は日本より多い傾向がある。食用油の価格が家計に与える影響は小さくない。
パーム油の環境問題との関係
パーム油生産のためにスマトラやカリマンタンの熱帯雨林が大量に伐採されてきた歴史がある。環境団体はヤシ農園の拡大が森林破壊と温室効果ガス排出を加速させると批判してきた。
インドネシア政府は「持続可能なパーム油(ISPO)」認証制度を整備しているが、認証の徹底は道半ばだ。「買い物のたびにパーム油の問題を考えるのは難しい」というのが在住者の正直な感覚で、環境意識と日常の食生活のギャップを埋めるのは今も課題だ。