GoJekはバイクタクシーを超えて、インドネシアのインフラになった
インドネシア発のスタートアップGoJekはオジェック(バイクタクシー)のデジタル化から始まり、食事配達・決済・物流・医療予約まで広がった。その革命の全体像。
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ジャカルタに来て最初の日、スマートフォンにGoJekアプリを入れる。これが在住日本人の間では「定番の初日アクション」になっている。
GoJekなしのジャカルタ生活は、今となっては想像しにくい。渋滞の中をすり抜けるバイクタクシー、30分で届く食事、電子決済、荷物の集荷。これが全部1つのアプリで完結する。
オジェックとは何か
オジェック(Ojek)はインドネシア語でバイクタクシーのことだ。ジャカルタの渋滞は世界屈指で、車では移動に数時間かかる距離もバイクなら30分で通れる。
GoJek登場以前、オジェックは路上の決まった場所に待機していた運転手と口頭で料金交渉する形式だった。料金は不透明で、外国人や観光客には高い料金が請求されることも多かった。
GoJekの誕生と拡大
GoJekは2010年、Nadiem Makarim(後にインドネシアの教育大臣に就任)が創業した。最初はコールセンターでオジェックを手配するサービスだったが、2015年にアプリ化して爆発的な成長を始めた。
アプリ化により、料金の透明化(GPS連動の距離計算)、ドライバーの評価システム、キャッシュレス決済の導入が実現した。利用者・ドライバー双方の安全性と信頼性が高まり、需要が急拡大した。
現在のGoJekのサービス範囲
GoTo(GoJekとTokopediaが合併したグループ)のアプリが提供するサービスの主なもの:
- GoRide:バイクタクシー
- GoCar:車のライドシェア(Uberに相当)
- GoFood:食事デリバリー
- GoSend:荷物配達
- GoPay:電子決済・送金
- GoMart:スーパーマーケットの即日配送
- GoMed:薬の配達・医療相談
- GoKos:賃貸物件検索
一つのアカウントで日常生活のほぼ全ての「手配」が完結する。
在住日本人の使い方
ジャカルタ在住の日本人が最もよく使うのはGoRide・GoCar・GoFoodだ。
GoRideの料金は距離・時間帯・需要に応じて変動するが、ジャカルタ市内の移動なら大抵IDR15,000〜30,000(約141〜282円)前後に収まることが多い。渋滞時はGoCar(車)より圧倒的に早い。
GoFoodは日本食・韓国食・地元のナシゴレン・ファストフードまで選択肢が幅広い。日本人が多いポンドック・インダーやクバヨランエリアでは日本食の配達対応店が多い。
GoPay(電子決済)の普及
GoPay(後にGoPay名で独立したが現在はGoToグループの一部)はインドネシアの電子決済革命を牽引した。スマートフォンのアプリで残高にチャージし、QRコードで支払う方式だ。
現在、ジャカルタの多くの飲食店・コンビニ・市場でGoPay・OVO・Dana等の電子決済が使える。現金を持たなくても生活できる環境が都市部では整いつつある。
ドライバーの経済的立場
GoJekはドライバーに収入の機会を提供した一方で、いわゆる「ギグエコノミー(gig economy)」の問題も抱えている。正規雇用ではなく「パートナー」扱いであるため、社会保険・最低賃金保証がない。
需要が少ない時間帯や天候不良の日は収入が落ちる。GoJekドライバーとして月IDR3,000,000〜5,000,000(約28,200〜47,000円)前後を稼ぐ人が多いとされるが、これはジャカルタの生活費水準を考えると厳しい額だ。
在住者として使う立場から「ありがたい」と感じるサービスが、提供側にどういう構造を持つかを知っておくことも、フェアな目で社会を見る上で必要だ。