家事を「全部外注」する生活——インドネシアの家政婦文化と雇用の作法
インドネシアでは月2〜3万円で家政婦(Pembantu)を雇える。住み込み・通い・ベビーシッターの種類、給与相場、雇用の際に知るべきマナーと法的ポイントを解説。
この記事の日本円換算は、10,000IDR≒95円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(IDR)の金額を基準にしてください。
インドネシアに住む日本人駐在員の多くが家政婦(Pembantu / Asisten Rumah Tangga)を雇っている。掃除、洗濯、料理、アイロンがけ、買い物——家事のすべてを任せる。月額IDR 2,000,000〜4,000,000(約1.9万〜3.8万円)程度。日本では考えられない価格帯だ。
「他人に家事を任せる」ことに抵抗がある日本人は多いが、インドネシアでは中間層以上の家庭で家政婦を雇うのはごく普通のことだ。
雇用の形態
住み込み(Tinggal Dalam): 家に住み込みで働く形態。部屋と食事を提供する。月給IDR 1,500,000〜3,000,000(約1.4万〜2.85万円)程度に加え、部屋・食事・日用品を雇用主が負担する。24時間対応が可能だが、プライバシーの確保が課題になる。
通い(Pulang Pergi): 毎日通いで来る形態。朝8時〜夕方4時程度の勤務。月給IDR 2,000,000〜4,000,000(約1.9万〜3.8万円)程度。自分の生活リズムを保ちやすい。
パートタイム: 週2〜3回、数時間だけ来てもらう形態。1回IDR 100,000〜200,000(約950〜1,900円)程度。洗濯とアイロンだけ、掃除だけ、といった部分的な依頼に向いている。
ベビーシッター(Babysitter / Pengasuh Anak)
子どものいる家庭では、家政婦とは別にベビーシッター(Pengasuh Anak)を雇うことがある。送迎・食事の世話・遊び相手を担当する。月給IDR 2,500,000〜5,000,000(約2.4万〜4.75万円)程度。
「家政婦兼ベビーシッター」として1人に両方を任せるケースもあるが、日本人家庭では役割を分ける傾向がある。子どもの安全に関わるため、信頼関係の構築が特に大切だ。
見つけ方
紹介: 最も信頼性が高い。同僚や知人の日本人家庭から「うちの前のPembantuが空いている」という紹介が来ることがある。前の雇用主の評判が確認できるため安心だ。
エージェント: 家政婦派遣エージェントを通す方法。登録料や紹介料がかかるが、身元確認や保険がカバーされる場合がある。
SNS・コミュニティ: ジャカルタの日本人コミュニティのFacebookグループやLINEグループで募集する方法。
雇用する側の作法
給与は契約時に明確にする: 月給・勤務日数・勤務時間・THR(レバラン賞与)の有無を書面で確認する。
THR(Tunjangan Hari Raya): ラマダン明けのレバラン(Eid al-Fitr)前に支払う賞与。法律で1ヶ月分の給与に相当する額を支払う義務がある。個人雇用の家政婦にも適用される。レバラン前に帰省するPembantuが多いため、事前に帰省期間を確認しておく。
休日: 週1日以上の休日を与える。住み込みの場合でも休日は確保する。
食事: 住み込みの場合は食事の提供が慣例。通いの場合も昼食を出す家庭が多い。
敬意を持つ: 「使用人」ではなく「一緒に暮らすパートナー」として接する。名前で呼ぶ。怒鳴らない。子どもが横柄な態度を取らないよう教える。インドネシア人のSNSで「Majikan(雇い主)が横暴だった」という投稿が拡散されることがあり、雇用主としての評判は日本人コミュニティ内でも共有される。
解雇時の注意
辞めてもらう場合は、1ヶ月前の事前通知が慣例だ。法的義務の有無は雇用形態による(家事労働者は労働法の対象外となるケースがあるが、THRの支払い義務は残る)。
退職金(Pesangon)として1〜3ヶ月分の給与を支払うのが一般的な慣行だ。法的義務ではなくても、円満な退職のために支払う日本人家庭が多い。
家政婦がいる生活は、インドネシア在住の大きなメリットのひとつだ。家事に費やしていた時間を仕事や子育てに振り向けられる。ただし「人を雇う」ことには責任が伴う。良い雇用関係を築けるかどうかが、インドネシア生活の質を大きく左右する。