Kaigaijin
海外在住日本人のメディア
経済・社会

インドネシアのインフォーマル経済——屋台・行商・露天が動かす巨大市場

インドネシアの経済を支えるインフォーマルセクター(屋台・露天商・行商)の規模と仕組みを解説。在住外国人が関わる機会と、カキリマ文化が社会に果たす役割。

2026-04-26
インフォーマル経済屋台カキリマ経済構造生活

この記事の日本円換算は、10,000IDR≒95円で計算しています(2026年4月時点)。

ジャカルタのオフィス街を昼に歩くと、ビルの谷間に屋台の列ができている。ナシゴレン、バクソ(ミートボールスープ)、ジュースのカート——白いシャツのサラリーマンが屋台の前で食事をとる。

これがインドネシアの「二重経済」の日常的な光景だ。

インフォーマルセクターの規模

インドネシアの労働人口の約55〜60%がインフォーマルセクターで働いているとされる(インドネシア中央統計局、2023年データ)。農業・小売・飲食・輸送を含むこの広大な領域では、税務登録も社会保険への加入も義務化されていないか、実態として機能していない場合が多い。

屋台(ワルン:warung)は最も基本的な形態だ。小さな売店から、路上の屋台台車(カキリマ:kaki lima、「5本の足」の意——台車の3輪+営業者の2本足という説がある)まで、形態は様々だ。

ジャカルタ市内だけで登録されている屋台・小規模食品事業者は数十万単位とされるが、非登録を含めると実態把握は難しい。GoFoodやGrabFoodといった配達アプリがインフォーマルな食堂を「オンライン化」したことで、一部は可視化されてきた。

カキリマが維持するもの

屋台経済は「弱者の経済」として捉えられることが多いが、別の見方もある。

巨大な物価格差を緩衝する機能を持っている。ジャカルタのショッピングモールでナシゴレンを頼めば60,000〜80,000IDR(約570〜760円)かかるが、路上の屋台なら15,000〜25,000IDR(約143〜238円)で同等のものが食べられる。都市の最低賃金近辺で働く人々の食事を支えているのはこのインフォーマルセクターだ。

また、屋台コミュニティは社会的なセーフティネットとしても機能する。農村から都市に出てきた若者が最初に就くのが屋台の仕事だったり、失業した人が屋台を開いて生計を立てたりするケースは多い。

在住外国人との接点

在住外国人が日常的に関わるインフォーマルセクターとして、ジョキ(joki)という職業がある。渋滞の3人以上乗車規制(3-in-1)が導入された時代には、1人乗り車の搭乗者役として路上に立って金を稼ぐ人々がいた(この規制は廃止されたが)。

現在ではGojekのバイクタクシー運転手など、ギグワーカーがインフォーマルとフォーマルの中間に位置している。

在住外国人が屋台を開くことは基本的に難しい(外国人の小売業参入規制がある)。ただし、インドネシア人パートナーとの事業という形では存在する。

インフォーマル経済を「整備されるべき未発展状態」と見るか、「都市の多様性を支える必要なインフラ」と見るか——ジャカルタに住むとこの問いが現実的になってくる。

コメント

読み込み中...