インドネシアGDPの6割——「見えない経済」インフォーマルセクターの正体
インドネシアの労働者の約6割はインフォーマルセクターで働いているとされる。税金もかからず、社会保険もない。でもその経済規模はGDPの半分以上。この「見えない経済」を理解せずにインドネシアは語れない。
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インドネシアの統計で「失業率」を見ると、2〜4%台という数字が出てくる(BPS統計庁による)。日本と大差ない。でも、インドネシアで街を歩いていると、そこらじゅうに働いている人がいる。路上で物を売る人、バイクで人を運ぶ人、家の修理をする人……彼らの多くは「失業者」ではなく「インフォーマルワーカー」として統計上は就業者に分類される。
インフォーマルセクターの定義
国際労働機関(ILO)の定義では、社会保険・契約書・最低賃金保障のない就労形態がインフォーマルセクターとされる。インドネシアでは全就業者の約57〜60%がこれに当たるとされる(ILO、BPS等のデータによる推定値で年によって異なる)。
具体的には、屋台・露店業者、家事労働者(お手伝いさん)、農業・漁業の零細従事者、建設現場の日雇い労働者、ゴジェックなどのギグワーカー——あらゆる形態のインフォーマル就業者が含まれる。
なぜこれほど大きいのか
インドネシアの正規労働市場(フォーマルセクター)への参入障壁は高い。大卒以上の学歴、コネクション(「ネポティズム」と揶揄されることもある)、言語能力が求められる大企業への就職は、農村出身者には狭き門だ。
公務員(PNS)は安定した職として人気が高く、採用試験には何十倍もの競争率になる。工場の生産ラインは一定数雇用を吸収するが、都市部への人口流入に追いつかない。
行き場のない労働力がインフォーマルセクターに流れ込む構造が長く続いてきた。
インフォーマルがGDPを支える
国際通貨基金(IMF)などの調査では、インドネシアのインフォーマルセクターの経済規模はGDPの50〜60%に相当するとの推計がある(測定方法によって大きく異なる)。税金が取れない経済が国全体の半分以上を占めるのは、政府の歳入にとって大きな課題だ。
一方で、インフォーマルセクターはセーフティネットとしても機能している。経済危機のたびに正規雇用から脱落した人々がインフォーマルセクターに吸収され、生計を維持してきた。1998年の通貨危機後も、インフォーマル就業者が急増することで露頭に迷う人を一定程度救った。
ゴジェックとの接点
近年のプラットフォーム経済——ゴジェックやGrabなどのライドシェア・デリバリー——はインフォーマルとフォーマルの中間的な存在だ。所得はインフォーマルに近いが、デジタルで記録される。税務当局も課税の仕組みを整備しつつあり、「デジタルインフォーマル経済」をどう課税するかが次の政策課題になっている。
在留外国人がインドネシアで日常的に使うサービスの多くは、このインフォーマルセクターの人々によって支えられている。それを知った上でチップを払うか、価格交渉をするか——そのあたりの判断が変わってくるかもしれない。