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インドネシアのSNSは政治の武器になった——2億人が使う「ホアックス」との戦い

インドネシアは世界屈指のSNS大国だ。WhatsApp・Instagram・TikTokの普及率は高く、選挙のたびに偽情報が拡散する。民主主義とデジタル化の交差点で何が起きているか。

2026-06-11
SNS政治偽情報デジタル社会

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「ホアックス(hoaks)」——インドネシア語に定着した英語由来の言葉だ。「偽情報・デマ」を意味するこの言葉が日常会話に入り込んだのは、おそらく2016年前後のことだ。SNSの爆発的な普及と、偽情報の洪水が同時に起きた。

SNS大国インドネシアの数字

We Are Socialの調査(2024年版)によれば、インドネシアのインターネット利用者数は約2億1000万人を超え、その多くがSNSを日常的に使う。WhatsApp・Instagram・TikTokの普及率は東南アジアでも際立って高い。

特にWhatsAppは「国民的コミュニケーションツール」と言っていいほど浸透している。家族のグループチャット、職場の連絡、近所のコミュニティ、政治情報の共有——すべてがWhatsAppで流れる。

選挙と偽情報のサイクル

2019年の大統領選挙では、対立候補を貶める偽画像・偽動画が大量に出回った。政府は「ホアックス対策センター」を設置し、偽情報を拡散したとして逮捕者も出た。電子情報法(UU ITE)は誹謗中傷や偽情報の発信を刑事罰の対象としており、数百人がこの法律で訴追されてきた。

2024年の大統領選ではプラボウォ陣営がTikTokを巧みに活用し、若い有権者への訴求に成功したと分析されている。舞踊する姿やユーモラスなショート動画が拡散し、「威圧的な元軍人」というイメージの刷新につながったという指摘がある。

「ブズワーカー」の存在

インドネシアには「ブズワーカー(buzzer)」と呼ばれる組織的なSNS工作集団の存在が長く報じられてきた。政党や企業からの依頼を受け、世論形成のために大量の投稿・リツイート・「いいね」を行うアカウント群だ。

フォロワーを購入したアカウント、bot、人間が操作するアカウントが混在する。見た目は民意のように見える潮流が、実際には作られたものである可能性がある。インドネシアのジャーナリストやリサーチャーはこの構造を繰り返し告発してきた。

市民の対応

一方で、偽情報に対抗する市民の取り組みも育っている。「Mafindo(反偽情報協会)」などのファクトチェック団体が、選挙期間中に拡散した誤情報を検証・公開する活動を続けている。学校での「デジタルリテラシー教育」も各地で始まっている。

WhatsAppのグループで回ってきたニュースを「本当かな」と立ち止まって確認する習慣は、まだ全員に身についているわけではない。でも、気にするようになってきた人が確実に増えている。

デジタル化と民主主義のせめぎ合い——インドネシアはその現場を世界に先行して生きている。

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