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活火山メラピとジョグジャカルタ——共存する文化

ジョグジャカルタの北に聳えるメラピ山は活火山で、定期的に噴火を繰り返す。それでも人々が山麓に住み続ける理由と、噴火と共存するジャワ文化の現実を解説する。

2026-04-25
メラピ山活火山ジョグジャカルタジャワ文化自然災害

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ジョグジャカルタの街から北を見ると、晴れた日には山頂から煙を吐くメラピ山(標高2,930m)が見える。「メラピ」とはジャワ語で「火の山」を意味する。

2010年には大規模噴火があり、死者350人以上・避難者約36万人を出した(インドネシア国家防災庁の記録)。それでも山麓の集落には人が戻り、今も生活が続いている。

なぜ山麓に住むのか

農業上の理由がある。火山性土壌は肥沃で、メラピ山麓の農地は米・野菜・コーヒーの生産に適している。代々この土地で農業を営んできた家族にとって、「別の場所に移る」という選択は農地・家・先祖の墓を失うことを意味する。

それだけではない。ジャワの文化では、メラピは単なる地形ではなく霊的な存在だ。山の霊(「ロロ・ジョンラン」とも呼ばれる)が宿るとされ、定期的な祈りと供え物(セラマタン)がコミュニティの儀式として続いている。噴火は「山の怒り」として解釈され、共存すべき存在として扱われる。

外国人として訪れる・近隣に住む

ジョグジャカルタ在住の外国人の多くはメラピを遠景として眺める立場だが、山麓ツアーを訪れる人も多い。2010年噴火の被災地エリアは現在「ムスアム・スデンガル(博物館)」として整備されており、溶岩に埋まった家屋が保存されている。

メラピ山の「スラトゥ(Selatur)」と呼ばれる斜面では今もコーヒーが栽培されており、地元の農家から直接購入できるエコツーリズムが発展している。1kg50万〜70万IDR(4,750〜6,650円)程度で、スペシャルティコーヒーとして輸出もされている。

噴火警戒と生活のリズム

インドネシア火山地質災害軽減センター(PVMBG)はメラピ山を24時間モニタリングしており、警戒レベルを4段階(Normal/Waspada/Siaga/Awas)で公表している。ジョグジャカルタ在住者の多くはこの情報を日常的にチェックしている。

警戒レベルが上がった際の避難ルートは住民の間で共有されている。日本の津波避難経路に似た文化で、「どこへ逃げるか」を知っていることが生活の一部だ。

日本との比較で感じること

日本も火山大国で、阿蘇山・霧島・桜島など活火山の周辺に人が住む。その構図はメラピと変わらない。

違うのは「山と人の関係の文化的意味」かもしれない。メラピの場合、噴火は「制御不能な災害」であると同時に「山との対話」として解釈される。その解釈が、被害を受けながらも山麓への帰還を選ぶ人々の論理を支えている。危険と文化的意味が切り離せない——これはジョグジャカルタを訪れて初めて実感できることだ。

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