Kaigaijin
海外在住日本人のメディア
生活・文化

水道水が飲めないだけではない——ジャカルタの地盤沈下と水危機の日常

ジャカルタは年間7.5〜10cmの速度で地盤沈下している。地下水の過剰汲み上げ・水道インフラの限界・在住者の浄水対策と飲料水確保の実態を解説。

2026-05-16
地盤沈下インフラ飲料水

この記事の日本円換算は、10,000IDR≒95円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(IDR)の金額を基準にしてください。

「インドネシアの水道水は飲めない」——これは正しい。しかし問題は「飲めない」ことだけではない。ジャカルタは地盤が沈んでいる。北ジャカルタでは年間7.5〜10cm沈下している地域がある。東京湾の埋立地の沈下速度が年間1〜2mm程度だから、桁が違う。

そしてこの地盤沈下の主因が、地下水の過剰汲み上げだ。水道水が信頼できないから地下水を使う。地下水を使いすぎるから地盤が沈む。地盤が沈むから洪水が増える。洪水が増えるから水が汚染される。悪循環だ。

なぜ水道水が飲めないのか

ジャカルタの水道普及率は約60%程度。首都でありながら、全世帯に水道が行き渡っていない。水道が引かれている地域でも、配管の老朽化・漏水・汚染により、蛇口から出る水の水質は飲用に適さない。

水道会社(PAM Jaya)は浄水処理を行っているが、処理場から家庭に届くまでの配管で水質が劣化する。築年数の古い配管からは錆や土砂が混入することがある。

在住者の飲料水確保

ガロンボトル(Gallon): 19リットルの大型ボトルを業者が定期的に届けてくれる。ブランドはAqua(ダノン系)が最も一般的。1本IDR 20,000〜30,000(約190〜285円)程度。多くの家庭・オフィスがウォーターサーバーにセットして使っている。

ペットボトル(Air Mineral): コンビニやスーパーでIDR 3,000〜5,000(約28.5〜47.5円)程度。Aqua、Le Minerale、Pristineなどのブランドがある。

浄水器: 一部の駐在員家庭は逆浸透膜(RO)式の浄水器を設置し、水道水を浄水して飲んでいる。設置費用はIDR 3,000,000〜8,000,000(約2.85万〜7.6万円)程度で、フィルター交換が定期的に必要。

料理と歯磨き

飲料水だけでなく、料理にもガロンボトルの水を使うのが安全だ。米を研ぐ水、パスタを茹でる水、スープの水——全て購入水を使う在住者が多い。

歯磨きはどうか。駐在員の間でも意見が分かれる。水道水でうがいをする人もいれば、徹底して購入水を使う人もいる。胃腸が弱い人は、渡航直後はペットボトル水で歯磨きをする方が安心だ。

洪水(Banjir)

ジャカルタの雨季(11月〜3月)には洪水が頻発する。地盤沈下で海面より低い地域が増えており、大雨のたびに冠水する。2020年の大洪水では数万人が避難した。

洪水は水質をさらに悪化させる。下水と河川水と雨水が混ざり合い、浸水した地域では水系感染症(レプトスピラ症、デング熱など)のリスクが高まる。

在住者としてできること

住居選びで浸水リスクを確認する: 不動産エージェントに「この地域はBanjirがありますか?」と聞く。GoogleマップやSNSでの過去の浸水情報を確認する。高層マンションは浸水の直接被害は少ないが、周辺道路が冠水すると外出できなくなる。

備蓄: 雨季の初めにガロンボトルを余分に確保しておく。洪水時は配達が滞ることがある。

氷に注意: ローカルのレストランやカフェの氷は、水道水から作られている場合がある。工場製の筒状の氷(Es Batu Kristal)は安全だが、手作りの不透明な氷は避ける方が無難だ。

ジャカルタの水問題は「インフラの問題」であると同時に「都市計画の問題」でもある。ヌサンタラ新首都への政府機関移転が進めば人口圧力は緩和される可能性があるが、地盤沈下は元に戻らない。「水」を意識して生活することが、ジャカルタ在住者の基本動作だ。

コメント

読み込み中...