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カーストと現代の就職活動:「履歴書に名前を書く」ことの重さ

インドの採用現場でカーストは法的に禁止されているが、名前・出身地・大学名から判断される現実がある。IT企業・政府留保制度・下位カーストの奮闘を読む。

2026-06-02
カースト就職差別インド社会IT産業

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インドで「名前を変えて就職活動をする」という選択をしている人がいる。下位カーストの名前を上位カーストに聞こえる名前に変えることで、書類選考の通過率が変わるという研究もある。カーストは1950年の憲法で差別を禁止されているが、名前という形で社会に埋め込まれている。

カーストと苗字の関係

インドの多くのヒンドゥー教徒は苗字からおおよそのカーストが判別できる仕組みになっている(地域・宗教・コミュニティによって大きく異なる)。シャルマー、シン、グプタ、ヴェルマ——これらは特定のカーストや地域コミュニティと結びついていることが多い。

採用担当者がカーストを意識的に差別しているかどうかより、「同じコミュニティの人を信頼しやすい」という無意識のバイアスが採用に影響するという研究が出ている。

留保制度(リザベーション)

インドには下位カースト(指定カースト=SC、指定部族=ST、その他後進カースト=OBC)向けに政府機関・公立大学・公的機関の採用・入学枠を一定比率確保する「留保制度(リザベーション)」がある。

全国レベルで見ると、中央政府の留保枠はSC=15%、ST=7.5%、OBC=27%(数字は変動があるため最新の公式情報を確認)。インド工科大学(IIT)等の名門校にも留保枠がある。

この制度は下位カーストの高等教育・公的雇用へのアクセスを広げた一方で、上位カーストの「逆差別だ」という不満の源でもあり、政治的に非常に敏感なテーマだ。

IT産業はカーストから自由か

バンガロールやプネー・ハイデラバードのIT産業は「メリトクラシー(能力主義)」を標榜することが多い。TCS・インフォシス・ウィプロ等の大手IT企業では、採用に際してカーストの明示的な考慮はないと言われる。

しかし社内の管理職・役員レベルを見ると、上位カースト出身者の比率が高い傾向があるという批判的分析もある(研究者や活動家からの指摘)。能力主義の枠組みの中にも、教育機会の不平等が持ち込まれている構造がある。

アンベードカルとダリットの逆転

インド憲法の起草者B・R・アンベードカルは「不可触民(ダリット)」出身で、高い教育を受けて法学者・政治家になった。彼の存在は「カーストを超えた個人の成功」の象徴だが、同時に彼の軌跡が「例外的」だったこと自体が当時の構造を物語っている。

現代のダリット起業家や政治家も増えており、構造は確実に変化している。ただしその変化が全ての人に届いているかというと、農村部と都市部では大きく異なる。

カーストはインドの過去ではなく現在進行形の問題だ。この視点なしにインドの雇用・教育・政治を読むことはできない。

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