クリケットは宗教——インド人の99%が熱狂するスポーツと社会的役割
インドでクリケットは単なるスポーツではない。人々の会話・職場の雰囲気・政治まで影響するクリケット文化と、在住外国人が知っておくべき社会的役割を解説します。
インドにいると、「クリケットを知らないと話が3割減る」という感覚がある。職場の月曜の朝に週末の試合の話が飛び交い、会議室のプロジェクターでIPL(インディアン・プレミアリーグ)の速報が映し出され、重要な試合のある日は街全体が静かになる。
クリケットの規模
インドクリケット協会(BCCI)の年間収入は他の全スポーツ連盟を合わせた額を超えるという話がある。インドは世界のクリケット市場の約70〜80%を占め、IPL(2008年に創設されたプロリーグ)はスポーツリーグとしてNFL・EPLに次ぐ世界3位の市場価値を持つとされる。
Virat Kohli(ヴィラット・コーリー)やMahendra Singh Dhoni(マヘンドラ・シン・ドーニー)といったクリケット選手は、俳優・政治家と並ぶ国民的スターだ。コーリーのInstagramフォロワー数は世界でも最上位クラスに入る。
インドとパキスタンの試合
クリケットの文脈で「インドとパキスタンの試合」は別格の意味を持つ。ワールドカップやアジアカップでのインド対パキスタン戦は、スポーツの枠を超えて国民的な関心事になる。この日に外出すると街が異様に静かで、全員がテレビの前にいると実感できる。
オフィスでも、パキスタン戦の日は業務効率が下がることが多く、「今日はMTGを入れない方がいい日」として暗黙の了解が存在する職場もある。
IPL——インドの春の風物詩
IPLは毎年3〜5月に開催される20試合制(T20)のプロリーグ。チームが各州を代表するフランチャイズ制で、ムンバイ・デリー・バンガロール・チェンナイ・コルカタなどが拠点を持つ。
観戦チケットは一般席で500〜2,000INR(約900〜3,600円)程度。プレミアム席は10,000INR以上になることもある。外国人在住者でもスタジアムの熱気を体験する価値が高いイベントで、現地の人と話す共通の話題にもなる。
在住外国人とクリケット
クリケットのルールを最初から完全に理解する必要はない。ただ「今日何点取った?」「コーリーのバッティングどうだった?」という会話ができるだけで、インド人同僚との距離がぐっと縮まることがある。
スポーツを通じた人間関係の構築という意味では、クリケットへの最低限の興味はインド在住のソーシャルスキルの一部と言ってもいい。ルールの基本(バッター・ボウラー・ウィケット・ランの概念)を覚えるだけで、会話の流れについていける場面は増える。