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インドのEV化政策と二輪車市場——電動スクーターが先に普及する理由

インドのEV化は四輪車より二輪車が先行している。年間2,000万台以上売れる二輪車市場でOla Electric、Ather Energyなどが台頭。政府のFAME補助金、充電インフラの現状、在住者のEV利用事情を数字で整理する。

2026-05-06
EV電動スクーター二輪車FAMEインフラ

この記事の日本円換算は、1INR≒1.8円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(INR)の金額を基準にしてください。

インドの道路を走る車両の約75%は二輪車だ。年間販売台数は2,000万台を超える。この市場のEV化が、四輪車より先に動き始めている。2024年の電動二輪車の年間販売台数は約100万台に達し、前年比で約40%増加した。

なぜ二輪車が先なのか

理由は3つある。

価格帯の近さ: ガソリン二輪車の平均価格は₹80,000〜₹150,000(約14.4万〜27万円)。電動スクーターは補助金適用後で₹80,000〜₹130,000(約14.4万〜23.4万円)程度まで下がっている。四輪EVの最低価格帯は₹10ラーク(約180万円)以上で、ガソリン車との価格差がまだ大きい。

走行距離の問題: 二輪車の1日の平均走行距離は30〜50km。現行の電動スクーターの航続距離80〜120kmで十分にカバーできる。四輪車はより長距離の利用が多く、航続距離の不安が購入障壁になる。

充電の手軽さ: 電動スクーターのバッテリーは取り外し可能なモデルが多い。自宅のコンセントで充電でき、専用充電ステーションを必要としない。

主要プレーヤー

Ola Electric: 2021年参入。2024年にはインドの電動二輪車市場でシェア約30%を獲得。S1 ProやS1 Xが主力モデル。自社工場(タミル・ナードゥ州)で年間200万台の生産能力を持つ。

Ather Energy: バンガロール発のスタートアップ。Ather 450Xは航続距離約105km、0-40km/h加速3.3秒の高性能モデル。自社充電ネットワーク「Ather Grid」を全国に展開している。

TVS Motor / Bajaj Auto / Hero MotoCorp: 既存の大手二輪車メーカーも電動モデルを投入し始めている。TVSのiQube、BajajのChetak Electricなど。

FAME補助金制度

インド政府はFAME II(Faster Adoption and Manufacturing of Electric Vehicles in India Phase II)として、電動二輪車1台あたり最大₹15,000(約27,000円)の購入補助金を交付していた。2024年以降はELECTRIC MOBILITY PROMOTION SCHEME(EMPS)に移行し、補助金額は縮小傾向にある。

各州政府も独自の補助金を上乗せしている。デリー、グジャラート、マハーラーシュトラなどは比較的手厚い。デリーでは州補助金と合わせて₹30,000〜₹40,000(約54,000〜72,000円)の補助が受けられるケースもある。

充電インフラの現状

2024年時点でインド全土の公共EV充電ステーションは約12,000カ所。政府は2030年までに46,000カ所に拡大する目標を掲げている。ただし現時点では主要都市(デリー、ムンバイ、バンガロール、チェンナイ)に集中しており、地方都市や農村部ではほぼゼロだ。

電動二輪車の場合は家庭用コンセント(15Aソケット)で充電できるため、充電ステーションの不足はそれほど大きな障壁になっていない。フル充電に5〜6時間、電気代は1回あたり₹15〜₹25(約27〜45円)程度。ガソリン代と比較すると1/5〜1/8のランニングコストだ。

在住者にとってのEV

バンガロールやデリーの在住外国人の中には、通勤用に電動スクーターを購入する人も出始めている。排気ガスの少なさ(大気汚染の深刻なデリーでは切実な問題だ)と、ガソリンスタンドに並ぶ手間の解消が主な動機だ。

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