MRP制度——インドの薬の値段は箱に書いてある上限価格で決まる
インドでは全ての商品にMRP(Maximum Retail Price)が印刷されており、それ以上の価格で売ることは違法です。特に医薬品では同じ成分の薬が10倍の価格差になることも。MRP制度の仕組みと在住外国人が知るべきポイントを解説します。
この記事の日本円換算は、1INR≒1.8円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(INR)の金額を基準にしてください。
日本の薬局では「定価」と「ポイント値引き」の微妙な攻防がある。インドでは話がもっと単純で、もっと複雑だ。全ての商品パッケージにMRP(Maximum Retail Price=最大小売価格)が印刷されていて、この価格を超えて売ることは法律違反になる。
MRPとは何か
Legal Metrology Act 2009に基づく制度で、メーカーが設定した「消費者が支払う上限価格」をパッケージに印字する義務がある。レストランのメニューにも適用されるし、ペットボトルの水にも適用される。薬も例外ではない。
注目すべきは「上限」であって「定価」ではないことだ。MRPより安く売ることは合法。だから同じ薬をMRPの10〜20%引きで売る薬局も存在する。
ジェネリックの価格差が極端
インドが世界最大のジェネリック医薬品輸出国であることは知られているが、国内価格の格差はあまり語られない。たとえば高血圧治療薬のアムロジピン5mg。ブランド品のMRPが₹120(約216円)に対して、ジェネリックは₹8〜₹15(約14〜27円)。同じ成分、同じ効果で10倍以上の差がつく。
政府系のジャン・アウシャディ・ケンドラ(Jan Aushadhi Kendra)という薬局チェーンがあり、ここではジェネリック医薬品を市場価格の50〜90%引きで販売している。全国に1万店舗以上展開されており、デリーやムンバイの主要エリアにもある。
外国人が薬局で気をつけること
処方箋なしで買える薬の範囲がインドは広い。抗生物質すら処方箋なしで買えてしまう薬局がある(規制上はNGだが実態として横行している)。だからこそ自己判断での購入はリスクが高い。
インドの薬局で買い物する際の実務的なポイントは3つ。
- MRPを確認する。レジでMRP以上を請求されたら違法なので指摘してよい
- ジェネリックの選択肢を聞く。医師の処方がブランド名でも「ジェネリックはありますか?」と聞けば出してくれることが多い
- 有効期限を確認する。小規模な薬局では期限切れの薬が棚に残っていることがある
日本との構造的な違い
日本の薬価は厚生労働省が決定し、全国一律の保険適用価格がある。インドにはその仕組みがない。代わりにNPPA(国家医薬品価格庁)が必須医薬品約900品目の価格上限を設定し、残りはメーカーがMRPを自由に設定する。
結果として、同じ成分の薬でもメーカーごとにMRPが大きく異なり、消費者は「どのメーカーのどのブランドを選ぶか」を自分で判断する必要がある。薬局の店員に相談すれば、安価な代替品を提案してくれることも多い。
MRP制度は「ぼったくり防止」の役割を果たしているが、価格の透明性と選択の自由が同時にあるインドの医薬品市場は、日本の「お任せ」文化とは対極にある。