「インド料理」という概念の誤りに気づく:南北の食文化はほぼ別の食べ物
北インドのカレーとバターナン、南インドのドーサとサンバル、東のベンガル料理、西のグジャラート料理——インドの食文化は地域で根本的に異なる。その多様性を整理する。
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日本人がインド料理と聞いてイメージするのは、バターチキンカレー、ナン、タンドリーチキン——これらはほぼ全てパンジャーブ地方または北インドの料理だ。インドの南半分に住む人々にとって、ナンは「外食か特別なときの食べ物」であって日常食ではない。
インドは「ひとつの料理文化」を持つ国ではない。
北インド料理:小麦とグレイビー
パンジャーブ・デリー・ウッタル・プラデーシュ・ラジャスタンを中心とする北インド料理は、小麦粉から作るパン(チャパティ・ロティ・ナン・パラタ)と、トマト・玉ねぎ・ヨーグルトベースのリッチなグレイビー(カレー)の組み合わせが基本だ。
バターチキン(マッカニー)・ダール・マカニー・サグ・パニール——これらが日本のインド料理店のメニューを占めている。ムガル料理の影響を受けた濃厚な味わいが特徴だ。
南インド料理:米と発酵
タミル・ナードゥ・カルナータカ・ケーララ・アーンドラを中心とする南インドの主食は米だ。ドーサ(薄い発酵クレープ)・イドリ(蒸した発酵餅)・サンバル(豆スープ)・チャトニー(ソース)の組み合わせが朝食の定番だ。
南インドのカレーは北インドより水分が多く、ターメリックとタマリンドの酸味が特徴的で、ココナッツを使うことも多い。ケーララのフィッシュカレーはその代表だ。
ベンガル料理:魚と甘さ
西ベンガル(コルカタ)のベンガル料理は魚と米が中心で、マスタードオイルを使い、甘い味わいを重視する。スイーツ(ミタイ)の種類が豊富で、ロショゴッラ(チーズボールシロップ漬け)は全国的に有名だ。
インドで「ベンガリーはスイーツが好き」というのは定番の評で、食文化のアイデンティティとして誇りを持っている。
グジャラート料理:完全菜食主義の世界
グジャラート州はジャイナ教・ヴィシュヌ派ヒンドゥーの影響でベジタリアンが多数派だ。グジャラート料理はその制約の中で多彩な味を生み出しており、甘酸っぱい風味のダール、薄い生地のダクラ(蒸しケーキ)等が特徴だ。
在住者として食を楽しむ
インドのどの都市にいても、出身地が異なるインド人が集まる「南インド食堂(ウドゥピ系)」「パンジャービーレストラン」「ベンガリーミタイ屋」が共存している。住む場所によって「地元の食文化」が変わり、移動するたびに食が変わる。
日本のカレーライスを食べ続けた人がインドに来てドーサを初めて食べると、「これもインド料理なの?」と感じることがある。その驚きがインドの食文化の奥行きを知る入口になる。