遺跡の隣で暮らす——ローマで2,000年の歴史と共存する日常
ローマに住むことは、2,000年の歴史の中で生活することを意味する。コロッセオの隣を通勤し、フォロ・ロマーノを眺めながら昼食を食べる日常と、遺跡と現代生活が交差する暮らしを紹介。
ローマに住んで最初に戸惑うのは、地下鉄を掘ると遺跡が出てきて工事が止まる、という現実だ。C線(Line C)は数十年にわたって掘り進めながら遺跡を保全しつつ延伸しており、開通が何度も遅れた。2000年前の都市の上に住んでいるのだから、当然といえば当然だ。
通勤路に遺跡がある
ローマのオフィスワーカーの多くが、コロッセオの前を通って仕事に向かう。テルミニ駅(中央駅)からコロッセオまで地下鉄で数駅。その車窓からパラティーノの丘が見える。「世界最大の野外博物館の中で暮らしている」という表現はローマに関しては誇張ではない。
フォロ・ロマーノ(古代ローマの中心広場跡)はほぼ市内中心部にある。隣のカピトリーノの丘には市庁舎が今も建っている。古代・中世・現代が重なるように存在しているのが、ローマという街の構造だ。
工事と遺跡の関係
ローマでは地下工事のたびに遺跡が出てくる。これは現地では「あるあるネタ」として知られており、工事予定のプロジェクトが何年も停滞する原因として報道されることが多い。
在住者から見ると「インフラ整備が遅い理由のひとつ」だが、同時に「過去と現在が本当に地続きなのだ」という実感を与えるエピソードでもある。
路上のオブジェ感覚
ローマ市内には、看板もなく路上に石の柱が立っていたり、建物の壁に半分埋まった古代の石材が使われていたりする。「これ、もしかして遺跡?」という場面が日常的に起きる。
博物館に収められず、しかし文化財として管理されているものと、単に「古いものが残っている」ものが混在している。何気ない広場の下に古代の道路が残っているケースもある。
観光客と地元民の視点の差
コロッセオ前には毎日大勢の観光客が行列を作る。在住者はその横を素通りしていく。「見慣れすぎて特別に感じなくなる」というのが在住数年後の率直な感想として多く語られる。
一方で、「桜の季節にコロッセオを眺めながらランチを食べると、改めてここに住んでいることが信じられなくなる」という逆の体験をする在住者もいる。慣れと感動が交互にやってくる、というのがローマ在住の日常だ。
文化財保護の制約
ローマに住む実際的な課題として、建物の改修規制がある。歴史的建造物に指定された物件(ローマでは相当数ある)は、外壁・内装の変更に制限がかかることがある。大家が勝手にリノベーションできないため、「古いまま」の物件が多い。
水回りの老朽化・断熱性能の低さが問題になるケースがある一方、天井のフレスコ画が残っていたり、石畳の床がそのままだったりという「予想外の良さ」もある。
2000年の歴史と一緒に暮らすことは、不便さと感動が隣り合わせにある生活だ。