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都市・生活

フィレンツェに住むということ——観光客の街で暮らす日常の現実

フィレンツェは世界で最も美しい都市のひとつだが、観光地化が進む中での実際の在住生活はどうか。家賃高騰、人混み、地元コミュニティへのアクセス方法を解説。

2026-04-16
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この記事の日本円換算は、1EUR≒160円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(EUR)の金額を基準にしてください。

フィレンツェに移住を考えているという話をすると、「観光地すぎて住みにくくない?」と聞かれることが多い。確かに一面の真実だ。けれども「観光地に住む」という状態がどういうものかは、実際に暮らしてみないとわからない。

人口37万人の「小さな大都市」

フィレンツェ(Firenze)の人口は約37万人(2024年時点)。ローマ(約280万人)やミラノ(約145万人)と比べると、かなり小さい都市だ。日本でいうと富山市や長崎市と同じくらいのスケール感になる。

だからこそ街全体が歩いて移動できる範囲に収まっていて、自転車か徒歩で生活が完結しやすい。地下鉄はなく(建設中)、主な公共交通はバス(ATAF)だ。

家賃の現実

フィレンツェは近年、観光客向けの短期貸し(Airbnb等)が長期賃貸市場を圧迫していて、家賃が高騰している。ドゥオーモや旧市街(Centro Storico)エリアのワンルームは月1,000〜1,500EUR(約160,000〜240,000円)以上が普通になってきた。

生活費を抑えるなら旧市街から少し離れたOltrarno地区(アルノ川の南側)や、トラムや自転車で30分程度のScandicciCampi Bisenzioなどの周辺エリアが現実的だ。これらの地区は観光客が少なく、地元の生活感が残っている。家賃は中心部の3〜4割安になる。

観光地で暮らす「慣れ」

ウフィツィ美術館の前でジェラートを食べている観光客の群れを脇目に、スーパーの買い物袋を持って歩く日常が半年続くと、「ここに住んでいる」という感覚が定着してくる。春と秋のピーク期は旧市街が人で溢れ、夏のフェッラゴスト(8月)前後は観光客が減って街が静かになる。

地元のフィレンツェ人(フィオレンティーノ)は、観光客で溢れる旧市街を避け、独自の生活圏を持っている。Oltrarnoのバール、週の市場、近所のristorante——観光客があまり来ない場所に、本物の生活が残っている。

フィレンツェ在住の利点

トスカーナ州に住むことの恩恵は大きい。週末に車で1時間圏内にキャンティのワイナリーシエナサン・ジミニャーノ、**海(マレンマ地方)**などが広がる。土曜の朝に市場で食材を買い、午後にキャンティでワインを買い、夜に自炊でトスカーナ料理を作る——そういう週末の過ごし方ができる。

ガストロノミー(食の質)はローマやミラノに劣らない。ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ(Tボーンステーキ)、リボッリータ(野菜の煮込み)、シュケッティ(薄いパスタ)。シンプルな素材の質で勝負するトスカーナ料理は、長く住んでも飽きが来ない食文化だ。

フィレンツェは「住むには不便な観光地」ではなく、「観光地という側面を持つ住みやすい中規模都市」として見ると、違った魅力が見えてくる。

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