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セリエAの審判文化——なぜイタリアサッカーの判定はこれほど議論を呼ぶのか

イタリアではサッカーの試合翌日、審判の判定がテレビ・新聞・バールの会話を占拠します。VAR導入後も議論は収まらない。カルチョパリ(八百長スキャンダル)の歴史、モビオーラ文化、審判という職業のリアルを伝えます。

2026-05-25
サッカーセリエA審判VARカルチョ

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月曜の朝、イタリアのバールに行くと必ず聞こえてくる単語がある。「Arbitro(アルビトロ=審判)」。昨日の試合の結果よりも、審判の判定が正しかったかどうかで議論が白熱している。日本では考えにくいが、イタリアでは審判の名前がスター選手と同じくらい知られている。

モビオーラ文化

イタリアのスポーツ番組には「Moviola」というコーナーがある。試合中の判定シーンをスロー再生で検証し、専門家が「正しい」「間違い」を判定する番組だ。1960年代から続くこの文化は、審判の判定を「絶対的な権威」ではなく「検証可能な意見」として扱うイタリア独特の感覚を育てた。

VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が2017-18シーズンからセリエAに導入されたが、議論は減るどころか増えた。「VARが介入すべきだった」「介入しすぎだ」という新しい論点が加わったからだ。

カルチョポリの影

2006年のカルチョポリ(Calciopoli)事件は、ユヴェントスの幹部が審判の割り当てに介入していたスキャンダルだ。ユヴェントスはセリエBに降格し、タイトルを剥奪された。この事件以降、イタリアのサッカーファンは審判に対する不信感を構造的に持つようになった。

「審判は公平か?」という問いが、冗談ではなく本気で議論されるのがイタリアのカルチョ文化だ。

審判という職業

イタリアの審判はAIA(Associazione Italiana Arbitri)に所属する。セリエAの主審の試合報酬は1試合€3,800〜€5,000(約60.8万〜80万円)程度とされるが、フルタイムの職業ではなく、本業を持ちながら審判活動を行う人が多い。

審判になるには15歳から地区のAIA支部で研修を受け、下位リーグから昇格していく。セリエAの主審になるまでに平均15〜20年かかるとされる。45歳が定年だ。

スポーツ新聞という文化

イタリアには3つの全国紙スポーツ日刊紙がある。La Gazzetta dello Sport(ピンク色の紙面)、Corriere dello Sport、Tuttosport。月曜日の発行部数は平日の1.5〜2倍に跳ね上がる。週末の試合結果と判定の検証が、翌日の1面を飾るからだ。

デジタル時代でもスポーツ新聞がバールのカウンターに置かれている光景はイタリアの日常だ。コーヒーを飲みながらピンクの紙面をめくる——この習慣を持つ人が、まだ相当数いる。

在住外国人にとってのカルチョ

イタリアで生活するなら、地元チームの試合を1回は観に行く価値がある。スタジアムのチケットはセリエAで€30〜€150(約4,800〜24,000円)。セリエBやセリエCなら€10〜€30(約1,600〜4,800円)で観戦できる。

試合そのものよりも、翌日のバールでの議論に参加することがイタリア社会への入口になる。「昨日の試合、見た?」はイタリア語で最も使い勝手のいい会話の切り出し方の一つだ。

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