イタリアの薬局は「緑の十字」だけじゃない:処方箋なしで買える薬と、薬剤師が医者代わりになる文化
イタリアの薬局(Farmacia)は日本のドラッグストアとは全く別物。薬剤師が症状を聞いて薬を選び、軽い診察のような役割を果たす文化。
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イタリアで風邪を引いた。かかりつけ医の予約は3日後。薬局(Farmacia)に行って「喉が痛くて熱がある」と言ったら、薬剤師が症状を聞き、体温を確認し、抗炎症薬と喉スプレーを出してくれた。所要時間10分、費用12EUR(約1,920円)。
イタリアの薬局は、日本のドラッグストアとは根本的に違う。
Farmaciaの社会的位置づけ
イタリアの薬局は「医療機関の一部」として位置づけられている。薬剤師(Farmacista)は5年制の大学を卒業し、国家試験に合格した医療専門職だ。日本の薬剤師と資格の厳密さは似ているが、社会的な権限が異なる。
イタリアの薬剤師は以下のことができる。
- 症状を聞いて、処方箋なしで買える薬(Farmaci da Banco / OTC)を推奨する
- 血圧測定、血糖値測定を店頭で実施する
- 新型コロナ・インフルエンザのワクチン接種(2021年以降)
- 簡易的な検査キットの提供・判読
「ちょっとした不調」であれば、医師にかかる前にまず薬局で相談する、というのがイタリア人の標準的な行動パターンだ。
処方箋の色分け
イタリアの処方箋には色分けがある。
- Ricetta Bianca(白い処方箋): 一般的な処方箋。薬局で提示して購入する。処方薬の一部は自己負担なし(SSNカバー)
- Ricetta Rossa(赤い処方箋): SSN(国民健康保険)対象の処方箋。Ticket(自己負担金)は薬の種類と州によって0〜5EUR程度
- Ricetta Elettronica(電子処方箋): 2020年以降、紙の処方箋から電子処方箋への移行が進んでいる。NRE(Numero Ricetta Elettronica)コードを薬局に提示するだけで薬が受け取れる
処方箋なしで買える薬
イタリアの薬局で処方箋なし(OTC)で購入できる主な薬は以下の通り。
- 解熱鎮痛薬: Tachipirina(パラセタモール)、Moment(イブプロフェン)
- 風邪薬: Aspirina C、Nurofen
- 胃腸薬: Maalox、Gaviscon
- 抗ヒスタミン薬: Reactine、Zirtec
- 目薬: Iridina
- 消炎鎮痛外用薬: Voltaren(ジクロフェナク)
抗生物質は処方箋が必要だ。ただし、薬剤師の判断で「これは医師に診てもらうべき」と言われた場合は、素直にかかりつけ医に連絡する。
営業時間と当番制
イタリアの薬局は通常、月曜〜土曜の8:30〜13:00、15:30〜19:30に営業している。昼休み(リポーゾ)がある。
夜間・日曜・祝日は「当番薬局(Farmacia di Turno)」が対応する。どの薬局が当番かは、薬局のドアに掲示されているほか、コムーネのウェブサイトやアプリ(例: Farmacia Aperta)で確認できる。
当番薬局では夜間加算(Diritto di Chiamata)が3〜5EUR程度かかる場合がある。
Parafarmacia(準薬局)の存在
2006年の規制緩和で、イタリアにはParafarmacia(準薬局)という業態が登場した。OTC薬とサプリメント、化粧品を販売できるが、処方箋が必要な薬は扱えない。スーパーの中にある「薬コーナー」もこのカテゴリに入る。
Parafarmaciaの価格はFarmaciaより10〜20%安いことがある。処方箋が不要な薬であれば、Parafarmaciaで買うほうが経済的だ。
日本との違い
日本のドラッグストアは「なんでも売っている」コンビニ的な存在だが、イタリアのFarmaciaは「医療の最前線」だ。化粧品やサプリも売っているが、メインはあくまで医薬品と医療相談。
イタリアに住むと、薬局が「かかりつけ医の予約が取れない間の橋渡し」として機能していることが分かる。その薬剤師の名前と顔を覚えるようになると、イタリアの医療システムとの付き合い方が楽になる。