スロー・フード運動の発祥地:ブラ(ピエモンテ)から始まった食の哲学
1989年にイタリアのブラで設立されたスロー・フード協会は、今や160か国以上に広がる国際的な食の運動になった。創設者カルロ・ペトリーニの思想と、現代における意義を紹介する。
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1986年、ローマにマクドナルドの1号店が開店した。その翌年、ピエモンテ州のジャーナリスト、カルロ・ペトリーニが「スナックバーに反対」というデモを組織し、それがスロー・フード運動の出発点になった。
ファストフードへの反発から始まったこの運動は、単なる食の保守主義ではなく、「何をどう食べるかで世界が変わる」という主張へと発展した。
スロー・フードとは何か
スロー・フード協会(Slow Food International、本部:ブラ市)が掲げるのは「Good, Clean, Fair(美味しく、清潔で、公正)」という3原則だ(出典:Slow Food International公式)。
- Good: 食材の持つ本来の風味を生かした料理
- Clean: 環境に負荷をかけない生産・消費
- Fair: 生産者が適切に報酬を得られる公正な流通
プレジディ:消えかけた食材を守る
スロー・フードの代表的プログラムの一つが「プレジディ(Presidi)」だ。絶滅危機の食材・品種・伝統的製法を「守るべき遺産」として認定し、生産者を支援する。
イタリア国内だけで数百のプレジディが指定されており、世界全体では約650以上のプレジディが存在するとされる(出典:Slow Food International各年)。特定の地域でしか作られない品種のオリーブオイル、特定の職人だけが作れるサラミ——これらが「食の多様性」として保存される。
テッラ・マードレ(Terra Madre)
2年に一度、トリノでテッラ・マードレという世界農民会議が開かれる(出典:Terra Madre公式)。世界中の小農家・料理人・食の専門家が集まり、食と農の未来を議論する場だ。
日本からも参加者がある。「日本の伝統食材をスロー・フードのプレジディに認定する」動きも過去にあった(推定)。
スロー・フードと在住外国人
スロー・フードのコンセプトは、イタリアで食に関わる仕事をする人(シェフ、農家、食品輸入業者等)にとって重要な知識基盤だ。イタリアの食文化の「なぜ地元産にこだわるのか」という問いへの哲学的答えがここにある。
在住者として「ファーマーズマーケット(mercato contadino)」や「アグリツーリズモ」を利用する行為は、意識的かどうかに関わらずスロー・フードの価値観に沿っている。
ファストフードへの反発が160か国の運動になった——その出発点がイタリアの小さな街にある。