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日曜日にドリルを使ったら警察が来た:イタリアの「静寂の時間」と騒音規制

イタリアには法律で定められた「静寂の時間」がある。日曜・祝日の騒音規制、平日のリポーゾ、マンションの規約がつくる音のルール。

2026-05-15
騒音法律日曜日マンション生活ルール

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日曜日の午前10時、イタリアのアパートでIKEAの棚を組み立てていた。電動ドリルを使い始めて5分後、下の階の住人がドアをノックしてきた。「Oggi e' domenica(今日は日曜日だ)」。

これだけで全てが説明されていた。

イタリアの「静寂の時間」

イタリアには「Orario di Silenzio(静寂の時間)」という概念がある。国の法律(Codice Civile 844条)で騒音の基準が定められており、それに加えてコムーネ(市区)ごとの条例とマンションの管理規約(Regolamento di Condominio)が具体的な時間帯を決めている。

一般的な静寂の時間帯は以下の通り。

  • 平日: 13:00〜15:00(リポーゾ=昼休み)、22:00〜翌8:00(夜間)
  • 土曜日: 13:00〜16:00、22:00〜翌9:00
  • 日曜・祝日: 終日(全日、工事・騒音禁止)

日曜日は「一日中静か」が原則だ。掃除機はギリギリOKだが、ドリル・ハンマー・大音量の音楽はNGになる。

リポーゾは生きている

リポーゾ(Riposo)はイタリア版のシエスタだ。昼食後に休むこの習慣は、特に南イタリアと地方都市では今も健在で、この時間帯に騒音を出すと苦情が来る。

ミラノやローマの中心部では、リポーゾの厳密な適用は緩くなってきている。しかし、住宅地ではまだ「13時から15時は静かにする」が暗黙のルールとして機能している。

工事業者も、この時間帯は作業を止める。リフォーム工事中のアパートで、職人が13時にピッタリ手を止めて昼食に行く光景は、イタリアの時間感覚の象徴だ。

マンション(コンドミニオ)の独自ルール

イタリアのマンション(Condominio)には管理規約があり、ここに独自の騒音ルールが書かれていることが多い。国や市の規制より厳しい場合もある。

よくあるルール例は以下の通り。

  • 楽器の演奏は1日2時間まで(かつ静寂時間帯は不可)
  • ペットの鳴き声に関する規定(犬の吠え声が「過度」な場合は管理組合で問題提起される)
  • 引っ越しの作業は平日の9:00〜12:00、15:00〜18:00のみ
  • パーティーは事前に他の住人に通知する(義務ではないがマナーとして)

入居前にRegolamento di Condominioの内容を確認するのは、家賃や間取りを確認するのと同じくらい大切だ。

違反するとどうなるか

近隣住民からの苦情が管理組合に届き、書面で注意される。改善しない場合、Carabinieri(憲兵)やPolizia Municipale(市警察)が呼ばれることがある。

罰金は自治体によって異なるが、50〜500EUR(約8,000〜80,000円)の範囲。悪質な場合や繰り返す場合は民事訴訟に発展することもある。イタリア人は裁判好きだ。隣人間の騒音紛争が裁判所まで行くケースは珍しくない。

工事・リフォームの騒音

アパートのリフォームは、コムーネに工事届(CILA: Comunicazione Inizio Lavori Asseverata)を提出する必要がある。工事可能な時間帯はコムーネの条例で定められており、一般的には平日8:00〜13:00、15:00〜19:00。土曜日は午前中のみ。日曜・祝日は全面禁止。

イタリアに住むと、「音」に対する感覚が変わる。日本では深夜でなければ気にしない程度の音が、イタリアでは昼間でも問題になる。逆に、夜のレストランやピアッツァ(広場)の喧騒は「生活の音」として許容される。

静寂と喧騒の境界線が、日本とは違う場所に引かれている。その感覚を掴むまでに、少し時間がかかる。

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