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ローマの石——トラバーチン石材と2,000年前の建物が残る理由

コロッセオからサン・ピエトロ広場まで、ローマの建造物に広く使われているトラバーチン(石灰華)の特性と採掘地。2,000年以上建物が残る理由と古代ローマの建築技術を解説する。

2026-04-30
ローマ建築トラバーチン古代ローマ歴史

この記事の日本円換算は、1EUR≒160円で計算しています(2026年4月時点)。

コロッセオは西暦72〜80年に建設されたが、今も外壁の多くが残っている。古代ローマ建築の耐久性の秘密の一つが、使用された建材にある。特にトラバーチン(Travertino:石灰華)は、古代から現代まで続くローマの建築の主役だ。

トラバーチンはローマ近郊のティヴォリ(アニエーネ川流域)で採掘される石灰岩の一種だ。多孔質で軽く、加工しやすく、時間とともに硬化する特性がある。ローマ近郊に豊富に存在したこと、切り出しやすいこと、耐久性が高いこと——この3要素が古代ローマの大規模建設を可能にした。

古代ローマのコンクリート(オプス・カエメンティキウム) もう一つの秘密がローマン・コンクリートだ。海水・火山灰(プッツォラーナ)・石灰岩を混合した独自の素材で、現代のコンクリートより硬化後の強度が増すという研究結果が2023年にサイエンス誌で発表されている。この素材が構造物の骨格を形成し、外側をトラバーチンで覆う構造がパンテオン・コロッセオ・浴場遺跡の耐久性を支えている。

現代ローマでのトラバーチン トラバーチンは現代でも建材として使われており、ローマのテルミニ駅・EUR地区のビルのファサード・バチカンのサン・ピエトロ広場の列柱もトラバーチン製だ。

ローマを歩いていると古い建物の壁に手を触れたくなる。それはただの観光衝動ではなく、2,000年の時間が圧縮された素材への本能的な反応かもしれない。在住者になると、その感覚は少し薄れるが消えることはない。

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