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放課後の子供が消える街——塾シャトルバスが作る「見えない都市交通」

韓国の学習塾(ハグォン)が運行するシャトルバスの実態を解説。放課後の小学生が次々と塾バスに吸い込まれる風景、ハグォンの年間費用、日本人家庭の塾選び、教育熱と子供の生活時間の構造まで。

2026-05-30
ハグォンシャトルバス教育熱放課後

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ソウルの住宅街で午後3時に外を歩いてみてほしい。小学校の門の前に黄色い小型バスが5〜6台並んでいる。下校した子供たちが次々とバスに乗り込み、5分後には歩道から子供の姿が消える。公園にも路地にも、遊んでいる子供がいない。

あのバスはハグォン(학원/学習塾)のシャトルバスだ。韓国の放課後は、塾バスによって再編成されている。

ハグォンの規模

韓国全土のハグォン数は約9万件。コンビニ(約5万件)の1.8倍だ。ソウルの江南区(カンナム)にある有名ハグォンには、数百人の生徒が通う。英語・数学・国語が3大科目で、これに加えてピアノ・テコンドー・美術・コーディング教室がある。

小学生の週間スケジュールは、こんな感じだ。

曜日学校ハグォン1ハグォン2帰宅
月〜金8:30〜14:3015:00〜17:00(英語)17:30〜19:30(数学)20:00
10:00〜12:00(国語)13:00〜15:00(ピアノ)15:30

平日は朝8時半から夜8時まで、12時間近く「外」にいる。帰宅後に夕食を取り、宿題をして寝る。

年間費用は200万ウォン〜800万ウォン

ハグォンの月謝は科目あたり20万〜50万ウォン(約21,000〜52,500円)。3科目通えば月60万〜150万ウォン(約63,000〜157,500円)。年間では200万〜800万ウォン(約210,000〜840,000円)になる。

韓国統計庁のデータによると、小学生1人あたりの月間平均私教育費は約41万ウォン(約43,000円、2024年)。世帯収入に占める教育費の割合は平均で約10〜15%だが、江南エリアでは20%を超える家庭も珍しくない。

日本人家庭の選択肢

韓国に駐在する日本人家庭は、大きく3つの教育パスを取る。

日本人学校: ソウル日本人学校は幼稚園〜中学校。日本のカリキュラムに準拠。ハグォンに通わせるかは家庭の判断。

インターナショナルスクール: 英語教育を重視する家庭向け。学費は年間2,000万〜4,000万ウォン(約210万〜420万円)。ハグォンの代わりに校内のアフタースクールプログラムがある。

現地校+ハグォン: 韓国語習得を優先する家庭。現地校は学費無料だが、ハグォンへの参加は事実上必須になる。周囲の子供が全員行っているため、行かないと友達との話題が合わなくなるという社会的圧力がある。

塾バスという「見えないインフラ」

ハグォンのシャトルバスは無料で、自宅近くまで送迎してくれる。親にとっては送り迎えの負担がなく便利だ。しかし、見方を変えると、子供の放課後の動線が完全にハグォンに管理されていることを意味する。

公園で遊ぶ時間、友達と自由に過ごす時間が構造的に削られている。韓国の出生率は0.72(2024年、世界最低水準)だが、「子供を1人育てるのにこれだけの時間と費用がかかる」という現実が、出産をためらわせる一因になっている。

教育熱の温度を知る

ハグォン文化を「異常」と断じるのは簡単だ。しかし、韓国社会では学歴が就職・結婚・社会的地位に直結する構造が依然として強い。合理的な個人の判断が集積した結果が、この風景を作っている。

日本人家庭としては、この環境に完全に合わせる必要はない。ただ、子供のクラスメートが全員ハグォンに通っている中で「うちは行かせない」と決めるには、それなりの覚悟と代替案が要る。

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