Kaigaijin
文化・社会

「生まれた瞬間に1歳」だった国。韓国の年齢制度が2023年に変わったこと

韓国は2023年6月28日、独自の「数え年」制度を廃止し、国際標準の満年齢に一本化した。1000年以上続いた年齢の数え方が変わるとはどういうことか。その背景と残された問いを読む。

2026-04-08
韓国年齢文化法律社会変化

2023年6月28日、韓国では全国民が一斉に「若くなった」。

韓国の伝統的な年齢制度では、生まれた瞬間に「1歳」だった。元旦を迎えるとまた1歳増える。つまり12月31日に生まれた赤ちゃんは、翌日の1月1日には「2歳」になる。この日に施行された改正民法によって、法律・行政上の年齢表記は国際標準の「満年齢(만 나이)」に統一された。大多数の韓国人が、書類上1〜2歳若くなった。

3つの年齢が並存していた国

変更前の韓国には、事実上3種類の年齢が並存していた。

一つ目が「韓国式年齢(한국 나이)」。生まれた年を1歳とし、以後1月1日ごとに加算する。二つ目が「満年齢(만 나이)」。誕生日を基準に国際標準で数える方式で、一部の法的場面ではすでに使われていた(パスポートの年齢表記など)。三つ目が「年齢(연 나이)」。生まれた年を0歳として、年ごとに1加算する方式で、学校の学年や兵役の適用基準に使われていた。

同じ人物が「韓国式で33歳、満年齢で31歳、年齢で32歳」という状況が普通に存在した。病院の問診票、酒やタバコの購入可否、ローンの申請書類で参照される年齢が文脈によって変わり、「自分は何歳ですか?」という問いに状況に応じて違う数字を答える必要があった。

なぜ変えたのか

2023年の改正は、国会議員80%超の支持を得て成立した(法務部の発表)。改正を後押しした世論調査では、回答者の80%以上が「年齢制度の統一を支持する」と答えている。

政府が押し出した理由は「社会的混乱の解消」だった。年齢の解釈が食い違うことで生まれる法的紛争、行政手続きの複雑さ、医療現場での誤記リスク。実際に2021年のコロナワクチン接種において、年齢表記の不一致が接種対象者の混乱を招いた事例が報告されている。

背景には世代差もある。Z世代を中心とした若い韓国人の間では、韓国式年齢への「なぜこうなっているのか」という違和感が以前から強かった。グローバル化とともに国際標準に馴染んでいる世代には、独自システムが不便でしかなかった。

何が変わり、何が残ったか

6月28日の施行後、法律・行政・病院での年齢表記は満年齢に統一された。ただし完全な一本化ではない。

学校の学年制度は引き続き「年齢(연 나이)」ベースで動いている。つまり、同じ学年に入る基準は「1月1日から12月31日の間に生まれた」かどうかで変わらない。兵役の適用基準も同様だ。

そして日常会話。韓国社会は年齢に基づいた敬語・呼称(目上・目下の区別)が複雑に絡んでいる。「年上かどうか」を確認するために年齢を聞く文化は根強く、ここでどの年齢を答えるかは状況によって違う。法律が変わっても、文化が即座に変わるわけではない。

在韓日本人への実際的な影響

韓国に住む日本人にとって、この変更は主に「相手の年齢の解釈」に影響する。

韓国人の友人や同僚が「나 ○歳」と言った場合、2023年6月以降は満年齢を指す可能性が高い。ただし年配の世代や、非公式な場では今でも韓国式年齢を口にする人も多い。「え、いくつ?」の返しに微妙な食い違いが生まれることはまだある。

また、契約書類や健康診断など公的な文脈で年齢を記入する場合は、明確に満年齢(만 나이)ベースになった。以前は「どちらで書けばいいか」と迷うことがあったが、この点はシンプルになった。

年齢を数える行為の意味

1000年以上続いた年齢の数え方を変えるという試みは、文化の「ファームウェアアップデート」に近い。使い慣れた操作が変わるような不快感を覚える人がいる一方で、何も気にしない人もいる。

日本でも「数え年」は今もお祝いの場(七五三、還暦等)で使われる。完全に消えたわけではない。韓国のケースは、公的基準を変えながら文化的習慣が並走し続けるという、制度変更の難しさを示している。

「今年何歳ですか?」という質問が、どれほど複雑な前提を持ちうるか。改めて考えると少し面白い。

コメント

読み込み中...