チョンセ崩壊の衝撃:保証金が返ってこない日
2022〜2023年にかけて韓国で多発したチョンセ詐欺問題。数千万円の保証金が戻らず、路頭に迷う被害者が続出した。その構造と在住外国人が取るべき対策を整理する。
この記事の日本円換算は、100KRW≒10.5円で計算しています(2026年5月時点)。為替は変動するので、現地通貨の金額を基準にしてください。
韓国独自の賃貸制度「전세(チョンセ)」は、月々の家賃を払わずに大きな保証金を預けて住む仕組みだ。数千万〜数億ウォンを一括で払う代わりに、退去時に全額返ってくる。理論上は。
2022年〜2023年にかけて、その「全額返ってくる」はずの保証金が戻らない事例が全国で多発した。
何が起きたか
不動産価格が急落した局面で、大家が次の借り手を見つけられなくなった。新しいチョンセ契約者から受け取る保証金で前の契約者に返金する「自転車操業」が、不動産価格の下落で維持できなくなったのだ。
また、同一物件に複数のチョンセ契約を重ねてかけた「갭투자(ギャップ投資)」の破綻も多かった。物件価格とチョンセ保証金の差額(ギャップ)だけで複数物件を保有する手法で、価格が下がると一気に転倒する。
被害者の中には保証金3億〜5億ウォン(315〜525万円)を失った人も多数いた。これは多くの人の人生の貯蓄に相当する。
外国人が特に気をつけるべき点
チョンセ契約は韓国語のリテラシーが低い外国人にとってリスクが高い。登記簿謄本(등기부등본)の確認、担保設定の有無の確認、確定日付(확정일자)の取得、全国住宅임대차정보시스템での登録など、権利保護のための手続きが複数あり、全て自分でやらないといけない。
不動産仲介業者(부동산)が全部やってくれると思っていると、いざというときに「自分でやらなかったから」と責任を転嫁される。
最低限の確認事項
登記簿謄本の確認(入居前) インターネット登記所(www.iros.go.kr)で誰でも確認できる。近抵当権・留置権などが設定されていないか確認する。
確定日付の取得 住民センター(주민센터)や登記所で入居当日に取得する。これをすることで、大家が破産しても自分の保証金が優先的に保護される。
チョンセ보증保険(保証保険)への加入 HUG(韓国主宅金融公社)やHF(韓国住宅金融公社)が提供するチョンセ保証保険に加入すると、万が一のとき保証金が補償される。保険料は保証金の0.1〜0.2%程度(年間)が目安だが、加入条件が物件価格によって変わる。
月払い家賃(월세)という選択肢
保証金リスクを完全に回避したい場合、月払い賃貸(ウォルセ)という選択肢がある。チョンセより毎月の出費は大きいが、失うリスクがある大金を預ける必要がない。
近年は外国人の間でも「小額保証金+月払い」スタイルを選ぶ人が増えている。特にソウル滞在が2〜3年以内と決まっている場合、チョンセの利点(月払い不要)よりも流動性を重視する判断は合理的だ。
チョンセは「韓国らしい賃貸文化」として紹介されることが多いが、構造的なリスクは現実に存在する。保証金を預けるときは「この金額を失ってもいい覚悟がある金額か」を自問してから契約する、という感覚が必要かもしれない。