パラサイト以降の韓国映画:世界が注目する産業の構造
2019年のパラサイト・アカデミー賞以降、韓国映画は世界からの注目を集めている。その背景にある制作環境・脚本文化・配給戦略を在住者の視点から探る。
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「パラサイト」がアカデミー賞の作品賞を受賞した2020年以降、韓国映画への国際的な関心は高まった。でも、ソウルで映画館に通う在住者から見ると、韓国映画産業は「賞を取る前から」すでに独自の進化を遂げていた。
韓国映画市場の基本データ
韓国は人口5,000万人強の国にもかかわらず、年間の映画チケット販売枚数が一時期は2億枚を超えていた(COVID前)。これは人口比で世界でもトップクラスの映画鑑賞頻度だ。
チケット価格は映画館チェーン(CGV・롯데시네마・メガバックス)で平均1万5,000ウォン(1,575円)前後。ポップコーンセット付きで2万〜2万5,000ウォン(2,100〜2,625円)程度。
韓国映画の特徴
韓国映画がグローバルに受ける理由として、脚本の「ジャンルの混合」が挙げられることが多い。
「パラサイト」はコメディかスリラーかサスペンスかどれか一つに分類できない。「オールド・ボーイ」はアクションか哲学映画かわからない。こうしたジャンルの境界を意図的に崩すアプローチが、韓国映画の特徴として語られることが多い。
監督・脚本家・俳優のトレーニング機会としては、映画アカデミー(한국영화아카데미, KAFA)の存在も大きい。公的支援を受けた映画人材の育成機関で、ここから多くの才能が巣立っている。
シネマ・コンプレックスの文化
韓国の映画館はCGVが圧倒的シェアを持つシネコン(멀티플렉스)中心。IMAXやドルビー、4DXなどの特殊フォーマット上映も充実しており、観客が「どのフォーマットで見るか」を選べる環境がある。
4DX(シートが揺れる・霧が出る・風が吹く)は韓国発のフォーマット技術で、CGVが世界展開している。
넷플릭스との関係
넷플릭스(Netflix)は韓国コンテンツへの大型投資を続けており、「스위트홈(Sweet Home)」「지옥(地獄が呼んでいる)」「오징어 게임(イカゲーム)」など世界的ヒットを生み出している。
映画館チェーンとNetflixの関係は「競合でありつつ補完的」で、Netflix作品が劇場公開を経ずに配信に出ることへの業界内の議論は続いている。
在住者が映画館で気づくこと
ソウルの映画館で映画を見ていて気づくのは、観客の集中度の高さだ。スマートフォンを見たり話したりする人は日本以上に少ない印象がある。
また、映画終了後に字幕なしで笑いが起きる場面(言葉遊びや地域ネタ)に、自分がどこまで韓国語を理解しているかを確認できる場面でもある。
韓国映画を「アジアの中の例外的な成功例」として見るよりも、「社会の変化を映し出すメディア」として見るほうが、その面白さが深く感じられる。階層格差・軍隊文化・家族の圧力など、韓国社会のテーマが映画に直結しているのは、偶然ではない。