韓国の葬儀は3日間つづく——日本人が驚く「病院の中の葬儀場」
韓国の葬儀文化「3日葬」の仕組みと、病院内に併設される葬儀場の構造を解説。日本の葬儀との違い、参列時のマナー、香典の相場まで。
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韓国の葬儀場は、病院の中にある。
初めて聞くと奇妙に感じるかもしれないが、韓国では総合病院の地下や別棟に「葬儀式場(장례식장)」が併設されているのが普通です。人が亡くなるのは多くの場合病院だから、そのまま同じ建物で葬儀ができる。合理的といえば合理的な構造です。
3日葬(삼일장)——なぜ3日間なのか
韓国の一般的な葬儀は3日間です。1日目に故人を安置し、2日目・3日目に弔問客を受け、3日目に出棺・埋葬(または火葬)。日本の通夜→告別式→火葬が1〜2日で完結するのと比べると、かなり長い。
この3日間、遺族は葬儀場に泊まり込みます。葬儀場には宿泊用の部屋があり、食事も出る。弔問客は3日間のうちいつ来てもいい。仕事帰りに立ち寄る人もいれば、遠方から駆けつけて1泊する人もいる。日本の「通夜に行くか告別式に行くか」という二択がなく、都合のいいタイミングで弔問できる柔軟な仕組みです。
弔問の流れ——花ではなく現金を包む
韓国の弔問は形式がはっきりしている。
受付で「부의금(賻儀金)」、つまり香典を渡します。白い封筒に入れ、表書きは「부의(賻儀)」。金額の相場は故人や遺族との関係性で変わりますが、一般的な知人・同僚なら5万〜10万ウォン(約5,250〜10,500円)、親しい友人なら10万〜20万ウォン(約10,500〜21,000円)程度。日本の香典相場とほぼ同じ水準です。
その後、焼香台で焼香し、遺族に「お悔やみ申し上げます(삼가 고인의 명복을 빕니다)」と伝え、二拝する。この「二拝」が日本との大きな違い。韓国では弔問時に床にひざまずいて深くお辞儀をします。
弔問が終わると、別室で食事をとる。これが葬儀場の食堂で、ユッケジャン(辛い牛肉スープ)やチヂミ、酒が振る舞われます。弔問客が食事をとるのは「遺族の負担を分かち合う」という意味がある。日本の精進落としに近いが、韓国では弔問客全員が食べるのが前提です。
服装は黒一色——ただし最近は変化も
弔問の服装は黒のスーツが基本。女性も黒の服装。日本と同じく喪服の文化ですが、最近はビジネスカジュアルの黒系でも許容される傾向にあります。ただし、赤や派手な色は避ける。
遺族は伝統的には麻布の喪服(상복)を着ていたが、現在は黒い服に喪章(黒いリボンや腕章)をつけるのが一般的です。
火葬率の急上昇——儒教の価値観が変わった
韓国は伝統的に土葬の国でした。儒教の「体は親からもらったもの、傷つけてはならない」という思想が強く、2000年時点の火葬率はわずか33.7%(韓国保健福祉部統計)。しかし2023年には火葬率が92.5%に達しています(韓国保健福祉部「2023年葬事文化実態調査」)。
わずか20年で土葬から火葬へ完全に転換した。背景には、都市化による墓地不足、墓地維持の費用負担、そして2000年に施行された「葬事等に関する法律」で火葬施設の整備が進んだことがあります。
納骨堂という新しい選択肢
火葬後の遺骨は、納骨堂(봉안당)に安置するケースが増えています。韓国の納骨堂は日本のものとは規模が違い、山の斜面に建てられた大型施設で、数万基を収容できるものもある。
費用は施設によって大きく異なりますが、ソウル近郊の公設納骨堂で50万〜100万ウォン(約5.3万〜10.5万円)程度。民間の高級施設になると数百万ウォンになることもある。
最近は「自然葬」——遺骨を粉骨して樹木の根元に撒く方法——も増えてきています。韓国山林庁が管理する自然葬地が全国に設置されており、費用は公設で10万〜30万ウォン(約1.1万〜3.2万円)程度と比較的安い。
日本人が韓国で葬儀に関わるとき
韓国に住んでいると、同僚や友人の家族の葬儀に参列する場面が出てくる。知っておくといいのは以下の点です。
- 弔問は3日間のうちいつ行ってもいい。「いつ行けばいいですか」と聞くより、自分の都合のいい時間に行く方が自然
- 食事は必ずとる。弔問だけして帰るのは失礼にあたることがある
- 香典の金額は偶数を避ける傾向がある。5万、7万、10万ウォンが一般的
- 花輪(근조화환)を送る場合は10万〜20万ウォン程度。会社名義で送ることが多い
葬儀は文化の違いが最も鮮明に出る場面の一つ。形式を間違えること自体は問題にならない。遺族が気にするのは「来てくれたかどうか」であって、作法の完璧さではありません。