韓国の葬儀で出てくる食事——なぜユッケジャンなのか
韓国の葬儀(장례식)で提供される食事の文化を解説。ユッケジャンが定番になった背景、葬儀場の食堂の仕組み、費用の相場、日本の葬儀との違い。
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韓国の葬儀に参列すると、必ず食事が出る。しかも弔問客全員に。日本の葬儀で通夜振る舞いや精進落としがあるのと似ているが、韓国の場合はスケールが違う。3日間の葬儀期間中、弔問に来た人は全員食堂で食事をとる。そしてテーブルの上に必ずあるのがユッケジャン(육개장)だ。
なぜユッケジャンか
ユッケジャンは牛肉と野菜を唐辛子で煮込んだスープ。韓国では古くから「辛いスープは邪気を払う」と考えられていた。葬儀の場で辛い汁物を食べるのは、悲しみの中にある弔問客の体を温め、悪い気を払うという意味がある。
もう一つの理由は実用的だ。ユッケジャンは大量調理がしやすい。肉と野菜を鍋で煮込むだけで何十人分も作れる。弔問客が何人来るか読めない葬儀では、追加調理がしやすい料理が選ばれる。
葬儀場の食堂
韓国の葬儀は病院に併設された葬儀場(장례식장)で行われることが多い。ほとんどの葬儀場には食堂が常設されている。
弔問客は焼香を済ませた後、遺族に挨拶をし、そのまま食堂に移動する。ユッケジャンのほかにも白米、キムチ、ナムル、焼き魚、チヂミなどが並ぶ。酒(焼酎やビール)も出る。日本の感覚だと葬儀で酒を飲むのは違和感があるかもしれないが、韓国では弔問客同士が故人を偲びながら杯を交わすのが自然な光景だ。
費用の仕組み
葬儀場の食事費用は遺族が負担する。1人あたりKRW 15,000〜30,000(約1,575〜3,150円)が相場。3日間で数百人の弔問客が来る場合、食事代だけでKRW 5,000,000〜10,000,000(約52万5,000〜105万円)になることもある。
ただし、弔問客は香典(부의금・ブイグム)を包む。相場はKRW 50,000〜100,000(約5,250〜10,500円)。親しい間柄ならKRW 200,000〜500,000(約21,000〜52,500円)。この香典で食事代と葬儀費用を相殺する仕組みになっている。
3日葬の構造
韓国の一般的な葬儀は3日間(삼일장)。故人が亡くなった日を1日目とし、3日目に出棺・火葬または埋葬を行う。
この3日間、遺族は葬儀場に泊まり込む。弔問客は3日間いつ来てもよい。夜中に来る人もいる。そのため食堂は早朝から深夜まで稼働し、いつ来ても温かいユッケジャンが食べられる体制になっている。
日本人が参列する場合
韓国で働いていると、同僚や取引先の葬儀に参列する機会がある。基本的なマナーは以下の通り。
- 服装は黒のスーツ。女性は黒のワンピースかスーツ
- 香典は白い封筒に現金を入れる。表に「부의(弔意)」と書くか、無地の封筒でもよい
- 焼香は2回が一般的(宗教によって異なる)
- 遺族に「삼가 고인의 명복을 빕니다(故人のご冥福をお祈りします)」と伝える
- 食堂での食事は断らずに受ける。食べることが弔意の一つ
食堂で出されたユッケジャンを食べるのは、遺族への礼儀でもある。「食べていってください」と言われたら、それは社交辞令ではなく、本当にそうしてほしいという意味だ。