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社会・制度

韓国の徴兵制、外国人から見るとどう映るか

韓国男性は原則全員が約18〜21ヶ月の兵役義務を負う。就職・人間関係・社会の空気まで徴兵制が与える影響を、在住日本人の視点で整理します。

2026-04-14
徴兵制韓国社会文化理解

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韓国の男性同僚と仲良くなってくると、会話の中に「군대(軍隊)に行く前は」「除隊してから」という時間軸が自然に出てくる。徴兵制の経験は韓国男性のライフラインに深く刻み込まれており、これを知らずにいると職場や人間関係で「なぜこの人はこういう反応をするのか」が理解しにくい場面が出てくる。

兵役の基本データ

韓国の兵役法に基づき、大韓民国の男性国民は原則として19歳になった年に徴兵検査を受け、28歳までに入隊する義務がある(2024年現在)。服務期間は配属先によって異なる。

兵種服務期間
陸軍・海兵隊18ヶ月
海軍20ヶ月
空軍21ヶ月
社会服務要員(補充役)21〜24ヶ月

兵役中の月額給与は2024年時点で兵卒(이등병)が約640,000KRW(約70,400円)から始まり、上等兵(상등병)・병장(병장)と上がるにつれ増額される仕組み。2025年以降は段階的な引き上げが発表されている。

就職・キャリアへの影響

日本から見て違和感を覚えやすいのが「入社後の休職扱いで兵役に行く」ケースだ。大企業・公企業では内定後に入社を延期して兵役を終えてから就職する流れが一般的だが、中小企業ではタイミングにより採用側・本人ともに調整が難しい。

外国人が韓国企業で働く際に知っておくべき点がある。20代後半の韓国男性社員が突然「入隊します」と言うケースは稀だ(多くは大学在学中か大学卒業直後に済ませる)が、大学院在学中に入隊する人や、病気・留学などで延期した人が後半に入隊するケースはある。その場合、在職者が長期休職するため、周囲の業務負担が増える。これは制度上当然のこととして受け入れられており、文句を言うのは非常識と見なされる。

「군필」「미필」が生む空気

韓国の職場・社会では「군필(兵役済み)」と「미필(未履行)」という区分が意識の中にある。男性同士の会話では「どこで군대行ったの?」が親密度を高める鉄板トピックになる一方、미필の男性(病気・海外国籍等の理由)には微妙な視線が向けられることも否定できない。

在住日本人男性はそもそも徴兵対象外だが、この二項対立の外側に置かれることで、ある種の「ガラス越し感」を感じる人もいる。韓国人の同僚が軍隊話で盛り上がる時、その共有体験の輪から自然に外れる感覚だ。

K-POPと徴兵:メディアで見えやすい側面

BTS(방탄소년단)の兵役問題が国内外で大きく報道されたように、兵役延期の特例は常に社会的議論の的だ。当初「文化的貢献を理由に延期できるか」が論争になったが、最終的にメンバー全員が順次入隊した(2024〜2025年にかけて除隊が進行中)。この件からわかるのは、韓国社会において徴兵の「平等性」が非常に高い政治的・道徳的価値を持つという点だ。

日常生活での影響

実際に韓国で暮らしていると、徴兵制の影響は細かいところで出てくる。

  • 週末の男性グループ客が多い時間帯がある: 社会人になってから旧友と再会する機会に徴兵期間中の話が欠かせない。同期(동기)という概念が強く、兵役での仲間意識が生涯続く
  • スポーツ観戦の熱さ: 野球・サッカーのスタジアムでは在郷軍人会的な男性コミュニティが盛り上がりを作る場面がある
  • 20代半ばのキャリアギャップ: 大学を卒業後すぐに兵役に入る場合、就職活動が26〜27歳スタートになる。日本の新卒一括採用的な発想とずれる部分だ

外国人が持つべき距離感

徴兵制について韓国人と話す際、「大変だったね」という同情的な言い方は必ずしも正確ではない。多くの韓国男性にとって軍隊は「厳しかったが、通過して当然のこと」という認識で、ネガティブな同情より「どの部隊だったの?」という具体的な関心を示す方が会話として自然に続く。

制度への批判は在住経験が長くなれば出てくる話題だが、外国人が最初から「徴兵制はどう思う?」と踏み込むのは、相手との関係性と場の空気を慎重に見た方がいい。

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