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真夏に熱々の鶏スープ——韓国人が一番暑い日に参鶏湯を食べる論理

猛暑日にこそ熱い参鶏湯(サムゲタン)を食べる韓国の習慣「以熱治熱」。汗だくでスープをすする行為の裏にある、体を季節に合わせる伝統的な身体観を読み解く。

2026-08-05
参鶏湯伏日韓方食文化

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8月、韓国でいちばん暑い日に、行列のできる店がある。冷たいかき氷の店ではない。土鍋でぐつぐつ煮立った熱々の鶏スープ、参鶏湯(サムゲタン)の専門店だ。冷房の効かない汗だくの店内で、人々が真剣な顔でスープをすすっている。

「暑い日に熱いものを食べる」というこの行動は、韓国独特の身体観を映している。

「以熱治熱」という発想

韓国にはイヨルチヨル(以熱治熱)という言葉がある。熱は熱で治す、という意味だ。暑さで弱った体を、冷たいもので冷やすのではなく、熱いものでむしろ温めて立て直す、という考え方になる。

夏の暑さで汗をかくと、体の表面は熱いのに内側は冷えている、という見立てがある。冷たいもので内側まで冷やすと、かえって体調を崩す。だから熱いスープで内臓を温め、栄養を入れて夏負けを防ぐ——伝統的な韓方の身体観に根ざした習慣だ。

科学的な厳密さの議論は別として、季節に合わせて体を「整える」という発想そのものが文化として生きている。

三伏に集中する理由

参鶏湯がとくに食べられるのは、初伏・中伏・末伏と呼ばれる「三伏(サムボク)」の日だ。夏のもっとも暑い時期にあたる、暦の上の特別な日にちで、毎年日付が変わる。

この日になると、参鶏湯の名店は朝から長蛇の列になる。会社単位で同僚と食べに行ったり、家族で予約を取ったりする。「暑い日に参鶏湯を食べそびれると一年損した気がする」という感覚を持つ人もいる。完全に季節の行事として定着している。

一杯に込められた栄養設計

参鶏湯は、若鶏の腹に、もち米・高麗人参・なつめ・ニンニクなどを詰めて長時間煮込む料理だ。鶏一羽が丸ごと入り、量も栄養も十分にある。

価格は店にもよるが、一杯おおむね1万5,000〜2万ウォン(約1,575〜2,100円)前後が目安になる。安くはないが、夏の体力維持への「投資」として割り切る人が多い。高麗人参やなつめは韓方で滋養強壮に使われる素材で、料理そのものが「夏を乗り切るための処方」のかたちをしている。

在住者・旅行者の楽しみ方

韓国で夏を過ごすなら、三伏の日に参鶏湯を食べるのは現地の季節感を味わう良い体験になる。ただし当日は混雑が激しいので、人気店なら予約か、ピークの昼を外す工夫がいる。

辛くないので辛い料理が苦手な人でも食べやすい。塩は別添えで、自分で味を調整するスタイルの店が多い。残ったスープにご飯を入れて締めるのが定番の食べ方だ。汗をかきながら食べ終えると、不思議と体が軽くなる感覚を味わえる。


真夏に熱いスープをすする韓国の習慣は、合理性だけでは説明しきれない。体を季節と対話させ、暑さに「冷やす」ではなく「温めて整える」で応じる——その身体観ごと味わうと、参鶏湯の一杯がただの鶏スープではなくなる。

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