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韓国に自営業者が多すぎる理由——定年後の「再就職」が起業になる構造

韓国は先進国でも突出して自営業者の比率が高い。チキン店やカフェが乱立する背景には、早すぎる定年と薄い雇用のセーフティネットがある。その構造を読み解く。

2026-08-09
自営業起業雇用定年経済構造

この記事の日本円換算は、100KRW≒10.5円で計算しています(2026年6月時点)。為替は変動するので、現地通貨の金額を基準にしてください。

韓国の街を歩くと、同じ通りにチキン店が何軒も並び、カフェがビルごとに入っているように見える。「なぜこんなに店が多いのか」と感じる人は多い。答えは味やトレンドの問題ではなく、雇用構造にある。

韓国は先進国の中でも自営業者の比率が高い社会で、その背景には独特の事情がある。

「早すぎる定年」が起業を生む

大きな要因は、主たる職場からの退場が早いことだ。

韓国の大企業では、定年まで勤め上げるより前に、役職定年や希望退職といった形で50代前後に第一線を退くケースが少なくないと指摘されてきた。一方で、平均寿命は延び、退職後も20年、30年の生活費が必要になる。

公的年金だけでは足りず、再就職の門も狭い。残された選択肢として「自分で店をやる」が浮上する。退職金を元手に、参入しやすいフランチャイズの飲食業を始める——これが自営業者を増やす典型的な経路になっている。

参入しやすい業種に集中する

問題は、参入が容易な業種に人が集中することだ。

特別な資格や専門技術が要らないフランチャイズの飲食・コンビニ・カフェは、誰でも始められる反面、誰でも始められるがゆえに過当競争になりやすい。同じエリアに似た店が増え、客の取り合いになる。開業して数年以内に廃業する店も多いとされ、退職金を失うリスクと隣り合わせだ。

これは、出口の狭い部屋に大勢が同じドアから入ろうとする状況に似ている。ドアの先に部屋の広さがないまま、人だけが押し寄せる。

セーフティネットの薄さが背景にある

なぜ無理をしてでも起業に向かうのか。雇用と社会保障のセーフティネットが、まだ発展途上だからという見方ができる。

失業給付の手厚さや、中高年の再就職支援が十分でなければ、「働けないと即、生活が苦しくなる」。だから多少のリスクを取ってでも、自分で収入源をつくらざるを得ない。自営業の多さは、選択の自由の表れというより、選択肢が限られた結果という側面が強い。

近年は政府も中高年の再就職や職業訓練の支援を強化しているが、構造そのものが急に変わるわけではない。

在住者・起業希望者が知っておくと役立つこと

韓国で自分の店を持ちたいと考える日本人にとって、この過当競争の実態は重要な前提になる。「流行っているから」と参入しやすい業種に飛び込むと、地元の激しい競争に巻き込まれやすい。

むしろ、日本人ならではの専門性や、日本語・日本文化を活かせるニッチを狙うほうが勝算が立てやすい。事業を始める際の登録手続きや税務、店舗の保証金などは事前にしっかり調べておきたい。「みんながやっているから安全」は、この市場では成り立たないことが多い。


韓国に自営業者が多いのは、起業精神が旺盛だからというより、早い退場と薄いセーフティネットが人を起業へ押し出しているからだ。街に並ぶ無数の店は、活力の象徴であると同時に、雇用構造のひずみの可視化でもある。そう捉えると、見慣れた風景の意味が変わって見えてくる。

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