韓国不動産投資ガイド——2025年の規制強化で「ソウルは許可制」に変わった
韓国で不動産投資を検討する日本人向けに、2025年の外国人購入許可制・取得税・キャピタルゲイン税・賃貸利回り・チョンセ制度・物件価格推移を解説。ソウル首都圏の新規制と投資戦略まで。
この記事の日本円換算は、100KRW≒10.6円で計算しています(2026年3月時点)。為替は変動するので、現地通貨(KRW)の金額を基準にしてください。
韓国の不動産、特にソウルのマンション(韓国では「アパート」と呼ぶ)は、2025年に前年比8.98%上昇した。過去最高の伸び率。供給不足を背景に、2026年も3〜8%の上昇が見込まれている。
ただし、2025年8月に外国人向けの規制が大きく変わった。ソウルを含む首都圏の住宅購入が「届出制」から「許可制」に切り替わり、居住義務まで課されるようになっている。
この記事では、韓国で不動産投資を考える日本人が押さえておくべきルール・税金・利回り・リスクを整理する。
外国人の所有ルール——ソウル首都圏は「許可制」
2025年8月の規制変更
2025年8月26日から、ソウル全域・京畿道23市郡・仁川7区が「外国人土地取引許可区域」に指定された。この区域内で住宅を購入する場合、契約前に政府の許可を取得する必要がある。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象エリア | ソウル全域、京畿道23市郡、仁川7区 |
| 対象物件 | アパート(マンション)、多世帯住宅、戸建住宅 |
| 除外物件 | オフィステル、相続・贈与、裁判所競売 |
| 居住義務 | 購入後4ヶ月以内に入居、2年以上居住 |
| 違反時 | 物件価格の最大10%の罰金、購入取消の可能性 |
| 適用期間 | 2025年8月〜2026年8月(延長の可能性あり) |
投資目的で「買って貸す」というスタイルが、ソウル首都圏の住宅では実質的にできなくなった。
許可区域外は従来どおり
釜山、大邱、済州など首都圏以外の都市では、従来どおり外国人が自由に購入できる。購入後60日以内に管轄の市・郡・区役所に届出を行えばよい。届出が遅れると最大300万ウォン(約31.8万円)の過料がかかる。
オフィステルという選択肢
オフィステルは許可制の対象外。ソウル首都圏でも外国人が投資目的で購入できる唯一の居住系物件になっている。ワンルームタイプが中心で、面積は20〜40平米程度。単身者や学生の賃貸需要が安定しており、投資対象として注目されている。
韓国独自のチョンセ(전세)制度
韓国の賃貸市場を理解するうえで、チョンセは避けて通れない。
チョンセの仕組み
チョンセとは、入居者が物件価格の50〜80%に相当する高額の保証金を大家に預け、月額家賃を払わない賃貸形態。契約期間は通常2年。契約終了時に保証金は全額返還される。
大家は受け取った保証金を運用・投資に回し、その運用益が実質的な「家賃収入」になる。入居者にとっては月々の支払いがなく、大家にとっては大きな資金を動かせるメリットがある。
チョンセの転換期
2024年、韓国国土交通部長官が「チョンセは時代が過ぎ去ったシステム」と発言した。実際、低金利時代の終了と保証金返還リスクの顕在化により、月額家賃を支払うウォルセ(월세)への移行が進んでいる。
投資家にとっての影響は大きい。ウォルセが増えれば毎月のキャッシュフローが見込めるが、チョンセのような大きな初期資金は入ってこない。賃貸経営のスタイルが変わりつつある。
税金——購入・保有・売却の各段階
購入時の税金
| 税目 | 税率 | 備考 |
|---|---|---|
| 取得税 | 1〜3% | 物件価格・用途により異なる |
| 地方教育税 | 取得税の10% | 取得税に上乗せ |
| 農漁村特別税 | 取得税の10% | 一部物件で適用 |
| 印紙税 | 約0.2% | 契約書貼付 |
| 登録免許税 | 1〜3% | 所有権移転登記時 |
取得税は物件価格と用途によって段階的に上がる。6億ウォン(約6,360万円)以下の住宅は1%、6〜9億ウォンは1〜3%、9億ウォン超は3%が基本ライン。2件目以降の住宅を取得する場合は重課税率(8〜12%)が適用される可能性があるため、要確認。
保有時の税金
| 税目 | 税率 | 備考 |
|---|---|---|
| 財産税 | 0.1〜0.4% | 公示価格に対して |
| 総合不動産税 | 0.6〜6% | 高額物件のみ。公示価格合計が一定額超で適用 |
| 都市計画税 | 0.14%以内 | 地域により異なる |
総合不動産税は、保有する住宅の公示価格合計が一定額(1住宅者は12億ウォン)を超えた場合に課される。外国人が1件目の住宅を持つ程度であれば、対象にならないケースが多い。
売却時の税金(キャピタルゲイン税)
非居住者が韓国の不動産を売却する場合、以下のいずれか低い方が適用される:
- 売却代金の10%(地方所得税含むと11%)
- 累進税率(6〜45%) での通常の譲渡所得税計算
3年以上保有した場合は長期保有特別控除(6〜30%)が適用され、課税対象額が圧縮される。基礎控除は年間250万ウォン(約26.5万円)。
短期売却は税率が重くなる。保有期間1年未満は70%、1〜2年は60%の税率が適用される。
賃貸収入にかかる税金
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 課税方式 | 総合所得に合算(累進税率6〜45%) |
| 非居住者の最低税率 | 所得に応じて累進 |
| 必要経費控除 | 管理費、修繕費、減価償却費等を控除可能 |
| 源泉徴収 | 賃料支払者が20%を源泉徴収するケースあり |
賃貸利回り——ソウルの実態
主要エリアのグロス利回り(2025年)
| エリア | 物件タイプ | グロス利回り |
|---|---|---|
| ソウル全体 | アパート(マンション)平均 | 約4.3% |
| ソウル | ワンルーム(1ベッドルーム) | 約6.6% |
| ソウル | ファミリー向け(4ベッドルーム) | 約2.7% |
| 江南・瑞草(プライムエリア) | アパート全般 | 2〜4% |
| ソウル郊外・非プライムエリア | ワンルーム | 最大6.6% |
小型物件ほど利回りが高い傾向がはっきりしている。江南エリアは物件価格が高いため、利回りは低めになる。
ネット利回りの目安
グロスから管理費・税金・空室期間・修繕費を差し引くと、ネット利回りはグロスの1.5〜2ポイント低くなる。ソウルのアパートでネット2〜4%程度が現実的なライン。
釜山・地方都市
釜山の平均グロス利回りは2%以下とソウルより低い。ただし、短期賃貸(Airbnb等)を活用すれば3〜5%程度まで上がる可能性がある。地方都市は物件価格は安いが、賃貸需要と流動性に注意が必要。
物件価格の推移
ソウルのアパート価格(2025年実績)
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| ソウル平均価格(㎡単価) | 約1,340万ウォン(約142万円) |
| 前年比上昇率 | +8.98% |
| 江南区(㎡単価) | 2,500〜4,000万ウォン(約265〜424万円) |
| 外郭区(蘆原・道峰等) | 800〜1,000万ウォン(約85〜106万円) |
ソウルのアパート価格は世界4位の水準。江南と外郭区では3〜4倍の価格差がある。
2026年の見通し
韓国不動産院と複数のシンクタンクの予測:
- 129名の専門家のうち74.4%がソウルのアパート価格上昇を予測
- 予測上昇率: 3〜5%が主流(2025年の8.98%よりは鈍化)
- 江南・松坡エリアは4〜8%の上昇余地
- 地方都市は59.6%の専門家が下落を予測——二極化が進行中
供給不足がソウル価格を押し上げる最大要因。2026年のソウル新規供給は前年比48%減の約16,412戸にとどまる見込み。
購入プロセスの流れ
首都圏(許可区域内)の場合
Step 1: 外国人登録証の取得 韓国で不動産を購入するには、外国人登録証(Alien Registration Card)が必要。出入国管理事務所で取得する。
Step 2: 政府の購入許可申請 2025年8月以降、首都圏の住宅購入には事前許可が必要。管轄の市・区役所に申請し、審査を受ける。
Step 3: 物件選定・仮契約 許可取得後、物件を選定し仮契約を締結する。通常、物件価格の10%をデポジットとして支払う。
Step 4: 残金支払い・本契約 仮契約から4〜8週間後に残金を支払い、本契約を締結する。
Step 5: 所有権移転登記 法務士(司法書士に相当)を通じて登記を行う。取得報告は残金支払い後60日以内に管轄役所へ提出する。
首都圏以外の場合
許可申請(Step 2)が不要になるだけで、他のプロセスは同じ。購入後60日以内に届出を行う。
オフィステル購入の場合
首都圏でも許可不要。居住義務もない。投資用途で最もシンプルなルートになる。
リスクと注意点
1. 規制変更リスク
2025年の許可制導入は急に決まった。今後さらに規制が強化される可能性がある。許可区域の拡大、オフィステルの規制対象化、外国人向けの追加課税——いずれも起こり得る。
2. 為替リスク
KRW/JPYはここ数年で大きく変動している。物件価格がKRWベースで上昇しても、ウォン安・円高になれば日本円ベースのリターンは目減りする。
3. チョンセ返還リスク(大家側)
チョンセで貸す場合、契約終了時に保証金を全額返還する義務がある。不動産価格が下落して物件を売却しても保証金を返せない「逆チョンセ難」は社会問題化している。
4. 流動性リスク(地方都市)
ソウルは取引量が多く流動性が高いが、地方都市は買い手が見つかりにくい。特に人口減少が進む地方では、出口戦略が立てにくくなる。
5. 言語・法務リスク
契約書は韓国語。不動産取引に関する法令も頻繁に改正される。韓国語が堪能でない場合、韓国の不動産法に詳しい弁護士への依頼は事実上必須になる。
6. 居住義務の制約
首都圏で住宅を購入した場合、2年間の居住義務がある。駐在期間が2年未満だったり、日本に帰国する可能性がある場合は、義務を満たせないリスクがある。違反時は物件価格の最大10%の罰金。
まとめ——韓国不動産投資の向き・不向き
韓国(特にソウル)の不動産は、供給不足を背景に価格上昇が続いている。ただし、2025年の規制強化により、外国人投資家にとってのハードルは確実に上がった。
向いている人:
- ソウル首都圏に2年以上居住する予定があり、自己居住+資産形成を兼ねたい
- オフィステルへの投資でソウルのワンルーム賃貸需要を取りたい
- 首都圏以外(釜山等)でキャピタルゲインを狙いたい
慎重に検討したほうがいい人:
- ソウルの住宅を純粋な投資目的(賃貸運用)で購入したい(居住義務で不可)
- 短期(2年以内)での売却を考えている(キャピタルゲイン税が60〜70%)
- チョンセ制度のリスクを取りたくない
最初のステップとしては、投資対象をソウル首都圏の住宅にするのか、オフィステルにするのか、地方都市にするのかを決めること。それによって規制・税金・利回りの構造が大きく変わる。現地の不動産弁護士や税理士に相談して、最新の規制状況を確認してから動くのが現実的な進め方になる。
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