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室内が寒い熱帯——マレーシアのモールやオフィスが「凍える」理由の経済学

熱帯のマレーシアなのに、モールやオフィスは寒いほど冷房が効く。過剰冷房の裏にある豊かさの記号・企業の判断・在住者の体調管理を読み解く。

2026-08-16
冷房オフィスモール気候マレーシア

この記事の日本円換算は、1MYR≒39円で計算しています(2026年6月時点)。為替は変動するので、現地通貨の金額を基準にしてください。

マレーシアのショッピングモールやオフィスに入ると、しばしば「寒い」と感じる。外は30度を超える熱帯なのに、屋内では羽織るものが欲しくなる。在住日本人がカバンにストールを忍ばせるのは、この過剰なほどの冷房に備えるためだ。なぜ熱帯の国が、室内をこんなに冷やすのか。

涼しさは「豊かさ」の記号だった

冷房が普及する以前、熱帯で涼しい空間は限られた人だけのものだった。だから「キンキンに冷えた室内」は、長らく近代性・豊かさ・上等なサービスの記号として機能してきた。

モールが冷房を強めにかけるのは、来訪者に「快適で上質な空間」という印象を与えるためでもある。暑い屋外から入った瞬間のひんやり感が、その場所の格を伝える。涼しさは、目に見えないおもてなしとして使われている。

冷やしすぎる側の事情

オフィスの冷房が強いのにも理由がある。湿度の高い環境では、設定温度を下げてしっかり除湿しないと、書類・機器・空気のよどみに問題が出やすい。また大空間を均一に冷やそうとすると、吹き出し口の近くは過剰に冷える。

つまり「全体を快適にしようとした結果、一部が冷えすぎる」という設計上の副作用が起きている。個人の体感差も大きく、ある人にちょうど良い温度が、別の人には寒すぎる。

涼しさのコストは誰かが払っている

冷房は電気で動く。室内を冷やすほどエネルギーを使い、その費用は施設側が負担する。それでも強めの冷房を維持するのは、快適さがもたらす集客・生産性の価値が、電気代を上回ると判断されているからだ。涼しさは無料ではなく、誰かが計算ずくで支払っている。

在住者にできるのは、薄手の上着を一枚持ち歩くことだ。熱帯なのに風邪をひく、というのは現地ではよくある話だ。外の暑さと室内の寒さ、その落差を前提に服装を組み立てると、一年を通して体調を崩しにくくなる。寒い室内は不合理ではなく、豊かさの記号と設計の都合が重なった結果なのだ。

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