ペナンのストリートアートと文化都市としての地位——壁画の街が生まれた理由
マレーシア・ペナンのストリートアートが世界的に知られるようになった背景と、ジョージタウンが文化都市として発展した経緯を解説。在住者目線で楽しむ壁画巡りのポイントも。
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ペナンのジョージタウンが世界に知られるようになったきっかけの一つは、ある立体壁画だった。
子どもが自転車に乗っているように見えるトロンプルイユ画——写真を撮る人の姿まで計算されたかのようなデザインが、SNSで拡散した。2012年頃の話だ。
壁画の街が生まれた背景
ジョージタウンの壁画プロジェクトは、偶然の産物ではない。
2008年、ジョージタウンはマラッカとともにUNESCOの世界遺産に登録された。「マラッカ海峡の歴史都市群」として、19世紀のイギリス植民地時代の建築群が評価されたものだ。
世界遺産登録後、老朽化したショップハウス(中国系移民が住んだ商業住宅)を活かした再開発の方向性が模索された。その流れの中で、2012年に市がリトアニア人アーティスト、アーネスト・ザカレフスキスに発注した立体壁画シリーズが爆発的に注目を集める。
壁画は観光客を呼び込み、カフェや宿が増え、若いアーティストが集まり、街が変わった。
代表的な壁画スポット
アルメニア通り(Armenian Street)周辺
ジョージタウンの壁画の密集地帯。ザカレフスキスの代表作「子どもと自転車」もここにある。1〜2時間あれば主要な壁画を網羅できる。
ロー・バック・ケー・プレイス(Lebuh Armenian)
鉄線細工のアート(Wire Art)も路地に点在する。生活風景をモチーフにした繊細な作品が多い。
文化都市ジョージタウンの今
ストリートアートブームから10年以上が経ち、ジョージタウンは次のフェーズに入っている。
観光客が増えた反面、地元住民(特に高齢の中国系マレーシア人)がジェントリフィケーションで追い出されるという問題も起きている。世界遺産の保護区域内では古い建物の取り壊しが制限されているが、家賃高騰は止められない。
一方で、独立系のアートギャラリー、クラフトショップ、コーヒーロースター、出版社が集まる「文化クラスター」としての魅力は増している。
在住者のペナン観光の使い方
クアラルンプール在住の日本人が週末旅行で選ぶ定番の一つがペナンだ。KLから飛行機で約1時間(MYR 80〜150/1,460〜3,200円程度)、または夜行バスで約5時間(MYR 50〜80)。
おすすめは土曜午前中にKLを出て、夕方ジョージタウンに入り、翌日曜に壁画巡りと屋台飯を楽しんで夕方帰るルートだ。ペナンはマレーシアを代表するフード・シーンでもある——チャークイティオ、ラクサ、アッサムラクサは本場の味を試す価値がある。
街歩きに半日使うだけでも、ペナンがなぜ「マレーシアで一番面白い街」と言われるか分かる。