キャメロンハイランドの気温は年中20℃——マレーシア唯一の「寒い」場所と農業
マレーシアの高原リゾート・キャメロンハイランドの気候、茶畑・イチゴ農園の農業経済、住環境、アクセスを在住者視点で解説。
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マレーシアは熱帯の国。年中30℃超の蒸し暑さが当たり前——のはずが、車で3時間山を登ると、気温が15〜25℃の別世界に出る。キャメロンハイランド(Cameron Highlands)です。
標高1,500mの高原——マレーシア唯一の「涼しい場所」
キャメロンハイランドはパハン州に位置する高原地帯で、標高は約1,300〜1,800m。年間平均気温は18〜22℃で、朝晩は15℃以下まで下がることもある。マレーシアで唯一「長袖が必要な場所」と言われています。
この気候のおかげで、イギリス植民地時代からヨーロッパ人の避暑地として開発されてきました。「キャメロン」の名前は、1885年にこの地域を測量したイギリス人ウィリアム・キャメロンに由来します。
茶畑の経済——BOH Tea
キャメロンハイランドを象徴する風景は、山の斜面一面に広がる茶畑。この茶畑を運営しているのが、マレーシア最大の紅茶メーカー「BOH Plantations」です。
BOHは1929年にイギリス人J.A.ラッセルが設立。現在はマレーシアの紅茶市場の約70%を占める独占的存在です(BOH社公式)。キャメロンハイランドに4つの茶園を持ち、総面積は約1,200ヘクタール。年間約450万kgの茶葉を生産しています。
BOHの茶園のうち「Sungai Palas Tea Garden」は観光客に開放されており、無料で見学可能。併設のカフェで淹れたてのBOH紅茶が飲める。紅茶1杯RM3〜5(約96〜160円)。眼下に広がる茶畑を眺めながら飲む紅茶は、キャメロンハイランド観光の定番体験です。
イチゴ農園——「マレーシア産イチゴ」の現実
キャメロンハイランドのもう一つの名物がイチゴ農園。涼しい気候を利用してイチゴの栽培が盛んで、観光農園でのイチゴ狩りはファミリー層に人気です。入場料はRM10〜15(約320〜480円)程度で、摘んだイチゴは100gあたりRM10〜15で購入。
ただし、正直に言うと品質は日本のイチゴとは差がある。品種は主に「Festival」や「Sweet Charlie」で、日本の「あまおう」や「とちおとめ」と比べると酸味が強く、甘みが薄い。マレーシアの気候条件では日本品種の栽培が難しいためです。
農業全体で見ると、キャメロンハイランドはマレーシア国内の野菜供給の約30〜40%を担っているとされています(パハン州農業局)。キャベツ、レタス、トマト、ニンジン、ピーマンなど、低地では栽培が難しい温帯野菜の一大産地です。
農業の裏側——不法開墾と環境問題
キャメロンハイランドの農業には暗い面もあります。需要の増加に伴い、許可なく森林を伐採して農地を拡大する不法開墾が深刻な問題になっている。
2014年と2021年にキャメロンハイランドで大規模な土砂崩れが発生し、不法開墾との関連が指摘されました。マレーシア政府は取り締まりを強化していますが、急斜面の農地拡大は続いています。農薬や化学肥料の過剰使用による水質汚染も問題視されており、「美しい茶畑」の裏にある環境負荷は無視できない水準です。
住むとしたら——リタイア組の選択肢
キャメロンハイランドに住む日本人は多くないが、MM2Hビザ保持者のリタイア層が一定数いる。
住環境としての魅力は明確。エアコンが不要(電気代の大幅節約)、虫が少ない(蚊が少ないのは大きい)、食材が安い(産地直売で野菜が安い)。家賃はKL中心部の半額以下で、コンドミニアム2LDKがRM800〜1,500(約25,600〜48,000円)/月程度。
一方で制約も多い。公共交通機関がほぼなく、車がないと生活できない。日本食レストランや日本人コミュニティは皆無に近い。病院は小規模なものしかなく、重篤な場合はイポー(車で約1.5時間)やKL(車で約3時間)まで行く必要がある。
アクセス
KLからキャメロンハイランドへは、車で約3〜4時間。バスはTBS(Terminal Bersepadu Selatan)からRM35〜50(約1,120〜1,600円)で、所要約4時間。
最寄りの空港はイポー(Sultan Azlan Shah Airport)で、そこからキャメロンハイランドまで車で約1.5時間。KLから日帰りも可能ですが、往復6〜8時間の運転になるので1泊をおすすめします。
KLの喧騒に疲れたとき、エアコンを切って窓を開けられる場所があるというだけで、キャメロンハイランドは特別な存在です。東南アジアに住んでいると「涼しさ」がいかに贅沢かを実感する。そういう体験ができる場所です。