マレーシアのEPF(従業員積立基金)——外国人労働者の掛け金と帰国時の引き出し
マレーシアのEPF(KWSP)について外国人向けに解説。加入の任意・義務の仕組み、掛け金率、Account 1・2・3の役割、帰国時の全額引き出し手続きとiAkaunの使い方。
この記事の日本円換算は、1MYR≒33円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(MYR)の金額を基準にしてください。
マレーシアで働くと、給与から自動的に引かれるEPF(Employee Provident Fund / Kumpulan Wang Simpanan Pekerja: KWSP)という積立が発生します。帰国するときに全額引き出せることを知らずに放置するケースが少なくないため、仕組みを理解しておいて損はありません。
EPFとは何か
EPFはマレーシアの法定積立基金です。主に老後の資金として設計されています。雇用主と従業員の双方が拠出し、KWSP(EPFを管理する政府機関)が運用します。
外国人(Non-Malaysian)に対する扱いは、2009年の法改正で変更されました。
外国人の加入は任意加入
2009年の改正以降、外国人労働者のEPF加入は原則として任意(Optional)です。
ただし、「任意」とはいえ、雇用主が「外国人もEPFに加入させる」方針をとっている場合は、雇用契約にEPF拠出が含まれることがあります。その場合は実質的に加入することになります。
入社時に雇用契約書を確認し、EPF拠出の有無を把握しておくことが大切です。
掛け金率
2024年時点での掛け金率(任意加入の場合も同じ構造)は以下の通りです。
| 区分 | 掛け金率(月給に対して) |
|---|---|
| 従業員(Employee) | 9% |
| 雇用主(Employer) | 月給5,000MYR以下: 13% / 5,000MYR超: 12% |
出典: EPF Malaysia(https://www.kwsp.gov.my/)
つまり月給5,000MYR(約165,000円)の場合、従業員450MYR(約14,850円)+雇用主650MYR(約21,450円)、合計1,100MYR(約36,300円)が積み立てられます。
Account 1・2・3の仕組み
2024年に制度改革が行われ、EPFの口座は3つに分かれました。
Account 1(Akaun Persaraan / 引退口座): 拠出額の75%が入ります。55歳到達前は原則引き出し不可(一部特例あり)。
Account 2(Akaun Sejahtera / 福祉口座): 拠出額の15%。住宅購入、教育費、健康目的等に引き出せます。
Account 3(Akaun Fleksibel / 柔軟口座): 拠出額の10%。年間を通じて引き出し可能(月1回まで)。2024年5月から導入された新しい口座です。
外国人が帰国時に申請する「全額引き出し」は、この3つのアカウント全額を対象とします。
帰国時の全額引き出し手続き
マレーシア在住外国人がマレーシアを離れる際、残高全額を引き出せる制度があります。
申請条件:
- マレーシア国籍でない
- マレーシアの永住権(PR)を持っていない
- マレーシアを永久に離れる意思がある
手続きの流れ:
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iAkaun(オンラインポータル)に登録・ログインする EPFのオンラインサービスiAkaun(https://i.kwsp.gov.my/)からアカウントを作成します。
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「Withdrawal for Non-Malaysian Citizens Leaving Malaysia」を申請 iAkaunから「Pengeluaran Meninggalkan Malaysia(Bukan Warganegara)」を選択。
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必要書類をアップロード
- パスポートのコピー(出国日が確認できるページ)
- 銀行口座情報(マレーシア国内口座、または海外送金先)
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審査・支払い 審査通過後、指定口座に振り込まれます。処理時間は2〜4週間程度が目安です(要確認)。
注意点: マレーシア出国後でもオンラインで申請できますが、帰国後に手続きを忘れて残高を放置するケースがあります。残高が少額でも、出国前または出国直後に手続きしておくことをおすすめします。
日本との二重課税の問題
EPFの引き出し金額は、日本の税務上は「退職金」や「一時所得」として申告が必要になる場合があります。日本とマレーシアの間には租税条約があり、二重課税の調整が適用されます。
具体的な税務処理は金額・状況によって異なるため、税理士に確認することを検討してください。
EPFは「マレーシアを去るときに全額戻ってくる積立金」として理解しておくと、損をする心配がなくなります。iAkaunへの事前登録と残高確認は、帰国準備の一環として早めに済ませておくと安心です。