ランカウイの免税制度はなぜ続いているのか——観光政策の実験場として設計された島
マレーシアのランカウイ島はアルコール・タバコ・チョコレートが免税で買える。なぜ一つの島だけが免税になっているのか。1987年のマハティール決断と観光政策の経緯を読む。
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マレーシアは敬虔なムスリムが多数を占める国だ。公共の場でのアルコール消費には規制がある。それでもランカウイに行くと、スーパーでビールをカートに積んでいる家族の光景を普通に見かける。
なぜランカウイだけが違うのか。
1987年のマハティールの決断
ランカウイが免税島になったのは1987年で、マハティール首相(当時)の政治的決断によるものだ。
当時、ランカウイはほぼ無名の農漁村の島だった。リゾート開発を進めてタイのプーケットやインドネシアのバリ島に対抗するため、観光客誘致の切り札として「免税島」というポジションを与えた。
アルコール・タバコ・菓子類・電化製品などが免税になることで、ペナンに代わる「マレーシアの免税ショッピング拠点」として外国人観光客と国内富裕層を呼び込む狙いだった。
免税の現実
現在ランカウイで免税になっている主なものは:
- アルコール飲料(ビール・ワイン・スピリッツ)
- タバコ製品
- チョコレート・菓子類
- 一部の電化製品・酒類
ただし免税で購入できる量には制限があり、本土への持ち出しにも制限がある。「大量に買って転売」を防ぐルールが設けられている。
在住者にとっての使い方
KLからランカウイへはエアアジア・マレーシア航空で約1時間のフライトがある。在住者の「ランカウイ旅行の楽しみ」の一つが免税で安くビールを飲めることだ。
ビーチリゾートとしての観光に加えて、「在住者がリセットに来る場所」としての機能もある。ペナンより観光地化が穏やかで、海がきれいな場所を求める在住者に定期的に利用される。
免税が「社会的に機能する」仕組み
マレーシア本土ではアルコールは一定の店でしか買えない(ハラール対応の店では販売しない)が、ランカウイという「別の場所」を設けることで、ムスリムの多いマレーシア社会と外国人観光客・非ムスリムのニーズを共存させている。
「全土では無理でも、一箇所だけなら」という設計は、多民族・多宗教社会の現実的な妥協の形だ。