カンポン(村)の家——マレーの伝統建築が「高床式」である理由
マレーシアの伝統的な家屋「ルマ・カンポン」は高床式で、柱の上に乗っている。なぜそのような構造なのか、気候・生態・文化との関係を解説します。
この記事の日本円換算は、1MYR≒34円で計算しています(2026年5月時点)。為替は変動するので、現地通貨の金額を基準にしてください。
マレーシアの農村を走る道路沿いに、高床式の木造家屋が建っている。
地面から2〜3mほど高い位置に床があり、柱の上に家全体が乗っている。日本の掘っ建て小屋とは全く違う、独特の佇まいだ。
「なぜ地面に建てないのか」——この問いへの答えが、熱帯の知恵の話になる。
高床式の理由
洪水対策:マレーシアは年間を通じて雨が多く、河川の氾濫や一時的な浸水が起きやすい。高床にすることで、水が出ても家の中に入らない。
通気性:高床にすると床下に風が通る。熱帯の高温多湿では、床からの通気が室内の温度を下げる効果がある。エアコンのない時代、これが快適さを保つ工夫だった。
害虫・動物対策:地面に這い上がりにくい高さにすることで、ヘビ・ネズミ・昆虫の侵入リスクを下げる。
水面に建てる場合:海岸・川岸の水上集落では文字通り水の上に建てる(コンクリートや杭で支える)。サバ州のコタ・ベルードなど、水上集落の文化が残るエリアがある。
建築材料と構造
伝統的なルマ・カンポンは、地元で採れる木材(ビルマチーク・マングロープ材など)と竹、棕榈(パーム)の葉などで作られた。
屋根は急勾配の切妻で、熱帯の雨が速やかに流れるよう設計されている。壁には格子状のパネルが使われ、風通しを確保しながら日差しを遮る。
現代のカンポンと変化
現在のカンポン(村)には、コンクリート製の現代的な家屋も多い。建築費・耐久性・メンテナンスの面から、木造高床式より「普通の家」が選ばれやすくなっている。
ただし水上集落や一部の農村では今も伝統的な高床式が残っており、観光地(サラワクのカルチャービレッジ等)では保存・展示されている。
マレーの家の「空間の使い方」
高床式の家では、床下のスペースが日常的に活用される。
農具の保管、昼間の子どもの遊び場、夜間の家畜(ニワトリ等)の囲い——「家の下」が生活に組み込まれている。単なる構造ではなく、生活のインフラとして機能している。
日本の古民家との共通点
日本の縁側・廊下・床下換気など、日本の伝統建築にも「空気の流れ」を意識した設計がある。気候が異なっても、「どう空気を回すか」という問いへの答えとして、それぞれの文化が独自の建築を生み出してきた。
それが時代とともに変わり、画一的なコンクリートに置き換わっていく——その変化の速さは、マレーシアも日本も変わらない。