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文化・社会構造の分析

歩道が建物の中にある街——「ファイブフットウェイ」が生んだ公共空間の発明

マレーシアの古い街並みには、建物の1階部分が歩道として開放された「ファイブフットウェイ」がある。私有地を公共に開く設計の歴史と、その思想を読み解く。

2026-08-29
建築公共空間都市歴史マレーシア

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マレーシアの古い街を歩くと、面白いことに気づく。歩道が、建物の外ではなく、建物の中を通っている。ショップハウスの1階の一部が屋根付きの通路として開放され、人々はその下を歩いて店から店へ移る。これは「ファイブフットウェイ(五脚基)」と呼ばれる、熱帯都市の知恵が詰まった設計だ。

私有地を公共に開く

ファイブフットウェイの本質は、各建物の所有者が、自分の1階部分を歩行者に開放することにある。本来は私有地である空間が、連なることで一本の屋根付き歩道になる。所有は私的なまま、機能は公共。この二重性が面白い。

この仕組みは植民地時代の都市計画に由来すると言われ、隣り合う建物がそれぞれ通路を提供することで、街全体に連続した歩行空間が生まれた。一人ひとりが少しずつ場所を差し出すことで、みんなが使える道ができる。

なぜ熱帯に必要だったのか

屋根付きの歩道は、熱帯では切実に役立つ。強い日差しからも、突然のスコールからも歩行者を守る。傘がなくても、炎天下でも、軒下を伝って街を移動できる。日射と豪雨という熱帯の二大ストレスを、建築の連なりで和らげているのだ。

つまりファイブフットウェイは、気候への適応と都市の効率を同時に満たす発明だった。歩く人を守りながら、店は人通りを得る。屋根の下を通れば、自然と店先を通過するからだ。

共有という発想の原型

現代の都市は、公共空間を行政が整備し、私有地とはっきり線を引く。だがファイブフットウェイは、私的な空間を少しずつ持ち寄って公共をつくるという、別の発想を見せてくれる。

在住者として古い街を歩くとき、この屋根付き通路に足を踏み入れたら、自分が誰かの私有地を借りて歩いていることを思い出すと面白い。一人ひとりの小さな譲り合いが、街全体の快適さをつくる——その思想が、百年以上前の建築に刻まれている。共有とは何かを考えるとき、この古い歩道は静かなヒントをくれる。

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