ペナングの壁画アートが観光資源になった理由——ジョージタウンの意図的な変貌
2012年を境に世界的観光地に変貌したペナングのジョージタウン。壁画アートが生まれた背景と、観光経済への影響を解説。
この記事の日本円換算は、1MYR≒33円で計算しています(2026年4月時点)。
「自転車に乗る子どもたち」の壁画を見るために、毎年何十万人もの観光客がペナンのジョージタウンに集まる。この壁画は2012年に描かれた。その1枚がきっかけで、ジョージタウンは10年余りで観光地として別の顔を持つようになった。
きっかけはユネスコ世界遺産登録
ペナングのジョージタウンは2008年にユネスコ世界遺産に登録された。英国植民地時代の歴史的建造物が残る旧市街が評価されたが、登録直後は観光客数が劇的に増えたわけではなかった。
転機は2012年。リトアニア人アーティスト**エルネスト・ザカレビシャス(Ernest Zacharevic)**がジョージタウンのアートフェスティバル(George Town Festival)に招聘され、建物の壁に一連の作品を描いた。
「子どもが自転車に乗る壁画」「ブランコに乗る子どもたち」など、建物の構造物(実物の窓枠・パイプ等)を絵の一部として組み込んだユニークな手法が、SNSで瞬く間に拡散した。
壁画が生んだ経済効果
ペナン州政府観光局のデータによると、ジョージタウムへの観光客数は2012年から急増し、年間観光客数は2018年前後に最高水準に達したとされる。
壁画マップ(現地のカフェや観光案内所で無料配布)を手に壁画を「スタンプラリー」のように巡るスタイルが定着し、ゲストハウス・カフェ・土産物店などの小規模事業者が集積した。
2010年代後半には「第2の壁画ブーム」として多くのローカルアーティストも参加し、現在ジョージタウンの壁画は50点以上になっている。
観光地化の光と影
一方で、旧市街の観光地化に伴う課題も生まれた。家賃の上昇で長年住んでいたペナン人(特に中国系の職人や小商店主)が郊外に追い出されるジェントリフィケーションが進んだ。
世界遺産の建物を改装してゲストハウスやカフェにするケースが増え、「保存か活用か」の議論はペナンで今も続いている。
日本人の歩き方
ジョージタウムの壁画エリアは徒歩圏内に集中している。レンタサイクル(RM20〜40/日、約660〜1,320円)が最も効率よく回れる手段だ。
朝9〜11時が最も涼しく、人も少ない。正午前後の直射日光は容赦ないので、昼間は旧市街のカフェや食堂で涼み、夕方に再び歩くのが現地在住者の定番コースだ。壁画だけでなく、プラナカン(中国系とマレー系の混血文化)建築の装飾もジョージタウムの見どころのひとつ。