週4勤務が標準の国で、なぜ保育園に入れないのか|オランダの育児パラドックス
オランダの労働者の約半数がパートタイム勤務。それなのに保育園は常に満杯で、待機リストは数ヶ月。週4勤務と保育難の共存構造を解く。
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オランダはOECD加盟国の中でパートタイム労働率が最も高い。労働者の約47%が週36時間未満で働いている。女性に限れば約60%。「週4日勤務」は普通のことだ。
にもかかわらず、保育園(kinderopvang)の待機リストは平均3〜6ヶ月。アムステルダムやユトレヒトでは、妊娠がわかった時点で登録しないと間に合わないケースもある。
パートタイム大国なのに、保育が足りない。この一見矛盾した状況には、構造的な理由がある。
「パパの日」という制度
オランダには「papadag(パパの日)」という非公式な文化がある。父親が週1日を育児に充て、残りの4日を仕事にする。母親も同様に週3〜4日勤務。夫婦で曜日をずらすことで、保育園の利用日数を減らす。
この仕組みが保育需要を「消している」ように見えるが、実態は逆だ。週3日しか預けないなら、その3日は確実に枠が必要になる。しかも全家庭が同じ曜日(火・水・木)に集中するため、特定曜日だけが飽和する。
保育料と補助金の構造
オランダの保育料は1時間あたりEUR9〜12(約1,440〜1,920円)。フルタイムで週5日預けると月額EUR1,800〜2,400(約28万8,000〜38万4,000円)になる。
ただし、所得に応じて国から「kinderopvangtoeslag(保育手当)」が支給される。世帯収入がEUR30,000程度なら保育料の約96%が補助される。収入が上がるほど補助率は下がり、EUR130,000を超えると約33%まで低下する。
この補助金制度があるからこそ保育需要が高い。「預けた方が経済的に得」になる家庭が多いのだ。
保育士不足という根本問題
待機リストの本質は、保育士の人手不足にある。オランダの保育士の平均月給はEUR2,200〜2,800(約35万2,000〜44万8,000円)。アムステルダムの家賃相場を考えると、保育士として生活するのが経済的に厳しい。
結果、保育施設は建物があっても人が足りない。枠を増やせない。2023年の業界団体の調査では、保育セクター全体で約1万人の人手不足が報告されている。
在住者にとっての現実解
妊娠が判明したら即座に保育園に登録する。これは大げさではなく、在住日本人の間でも定番のアドバイスだ。複数の保育園に同時登録することも一般的で、登録料はEUR25〜50程度。
もう一つの選択肢が「gastouder(ホストペアレント)」。個人宅で子どもを預かる制度で、登録された個人が自宅で最大6人まで保育する。保育園より融通が利き、空きも見つかりやすい。補助金の対象にもなる。
週4勤務で余裕があるように見えるオランダの育児だが、その余裕は制度設計と個人の工夫の上に成り立っている。仕組みを理解してから動くのと、来てから慌てるのとでは、最初の半年がまるで違う。