自転車大国の日常——信号・駐輪・通勤で自転車が主役の生活
オランダでは自転車が単なる移動手段ではなく生活インフラ。自転車レーンの使い方、駐輪ルール、通勤や買い物での活用法を在住者目線で解説。
オランダには自転車が2300万台以上あるとされる。人口約1800万人の国で、人より自転車のほうが多い。在住者として感じるのは、「自転車に乗れないと生活が不便」ではなく、「自転車に乗らないと明らかに損をする」という感覚だ。
自転車レーンは専用道
オランダの道路には、赤いアスファルトで舗装された専用の自転車レーン(fietspad)が整備されている。車道と分離された専用レーンがほとんどの幹線道路に存在し、自転車専用の信号機(青い自転車マーク)も設置されている。
歩行者が自転車レーンに入るのはNGだ。観光客が気づかずに歩いていると、後ろからベルを鳴らされる。在住者になったら、まず「どの地面が歩道でどこが自転車レーンか」を見分けることから始まる。
通勤・買い物で普通に使う
アムステルダム市内であれば、自転車で30分以内に移動できる範囲が広い。電車やバスよりも時間が読めることも多く、駐車場を探す手間もない。
スーパーへの買い物も自転車が標準だ。ハンドルにエコバッグを掛ける、荷台にカゴを付ける、前かごに子どもを乗せる——こういう光景が普通に見られる。
雨の日でもレインコートを着て自転車に乗る人が多い。「雨だから電車にする」という発想は少数派だ。
自転車の値段と盗難問題
新品の実用的な自転車は200〜600EUR(32,000〜96,000円)程度。中古市場も活発で、50〜150EUR(8,000〜24,000円)の自転車が多く流通している。
盗難が非常に多い。アムステルダムだけで年間数万台が盗まれるとされる。鍵を2つ以上かけるのが基本で、フレームを固定物(柵・ポール)に繋ぐ「フレームロック+チェーンロック」の組み合わせが標準だ。
路上の安い自転車(ジョパー、zwarte fietsと呼ばれる盗品市場の流通品)に手を出すと、後で問題になることがある。中古でも信頼できる自転車店で購入するのが無難だ。
駐輪ルール
アムステルダムでは駐輪場所の規制が厳しい。指定外の場所に放置した自転車は市に撤去され、引き取り手数料(約25EUR)がかかる。
駅周辺には大型の有料駐輪場があり、長期駐輪なら月額プランを契約する選択肢もある。市内の「自転車通行禁止エリア」は観光地の中心部などに存在し、自転車を押して歩く必要がある。
子育て世代とカーゴバイク
子育て家庭では、大型の荷台付き自転車(bakfiets、カーゴバイク)が広く使われている。前方の木製コンテナに子どもを2〜3人乗せて走る光景はオランダ特有のものだ。
カーゴバイクの価格は1,000〜3,000EUR(16〜48万円)と高いが、都市部では車の代わりとして機能する。保育園への送り迎えも自転車、スポーツ教室への送迎も自転車、という生活スタイルが成立している。
自転車は道具というより、オランダ人の暮らしそのものに組み込まれた存在だ。在住して半年もすると、自転車なしの生活がイメージしにくくなる。