オランダとスリナム:植民地主義の「清算」はどこまで進んだか
2022年、オランダ国王は奴隷制度に対して正式に謝罪した。しかし謝罪は終着点ではなく出発点だ。スリナムとオランダの現在の関係を通じて、ポストコロニアルの現実を考える。
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2022年12月19日、オランダ国王ウィレム=アレクサンダーはスリナムの首都パラマリボを訪れ、オランダの奴隷制度の歴史に対して公式に謝罪した。オランダは17世紀から19世紀にかけて奴隷貿易に関与し、多くのアフリカ系の人々を西インド諸島やスリナムに連行した。
この謝罪は歴史的出来事として報道されたが、それが実際に何を変えたかは、より複雑な問いだ。
スリナムとの歴史的関係
スリナムは南米北東部に位置し、1975年にオランダから独立した。現在も人口の多くはアフリカ系、インド系(ヒンドゥスタン系)、ジャワ系(インドネシア系)の子孫で構成され、オランダ語が公用語だ。
独立後も多くのスリナム人がオランダに移住しており、現在オランダには推定35万人以上のスリナム系住民が暮らすとされる(出典:オランダ統計局 CBS)。アムステルダム南東部や郊外にはスリナム系のコミュニティが集中している。
謝罪の「形式」と「実質」をめぐる議論
謝罪に対する反応は複雑だった。スリナム系市民の中には「言葉だけでは不十分」「賠償が必要」という声がある一方、「歴史的な一歩として評価すべき」という声もある。
特に論点になったのは、国王が謝罪した日付だ。スリナムの奴隷制度廃止記念日(Keti Koti、7月1日)ではなく、別の日程で行われたため「当事者に合わせる気がない」という批判も出た。
オランダ国内では、謝罪に伴う賠償の議論が続いている。関係する各自治体が独自に取り組みを示している一方、国としての賠償制度については議論が未決のままだ(2026年時点)。
スリナム料理とオランダの日常
こういった重い歴史がある一方で、オランダの日常にはスリナムの影響が深く溶け込んでいる。スリナム料理はオランダで最も人気のある「外国料理」の一つだ。
ロティ(Roti)はインド系スリナム人が持ち込んだカレーをクレープ状の薄い生地に包んだ料理で、アムステルダム中心部でも気軽に食べられる。ポムス(Pom)やナシゴレン(インドネシア系スリナムの影響)も定番だ。
食文化を通じて、植民地主義が残した文化的交差点がオランダ社会に「普通」として存在している。
在住日本人が見る多文化社会
オランダを「進んだ多文化社会」として見る日本人も多いが、内側から見ると構造的な格差は根深い。スリナム系やモロッコ系の住民が経済的・教育的に不利な立場に置かれていることを示すデータは多くある(出典:SCP各種報告書)。
植民地主義の清算は、謝罪という儀式よりずっと時間のかかる、構造的な作業だ。それがオランダ社会でどう進むか——あるいは進まないか——は、移民国家としての日本の将来にも参照可能な問いを含んでいる。