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安楽死合法国オランダ:法律ができてから社会はどう変わったか

2002年に世界で最初に安楽死を合法化したオランダ。年間数千件が実施される現在、医師・患者・家族はどのようにこの制度と向き合っているのか。

2026-06-04
安楽死オランダ法律医療倫理社会制度

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オランダが世界で初めて安楽死を合法化したのは2002年のことだ。それから20年以上が経ち、この制度は社会に「定着」したと言えるのか。数字を見ると、答えは単純ではない。

数字の変化が示すもの

オランダ当局(Regionale Toetsingscommissies Euthanasie、地域安楽死審査委員会)の報告によると、安楽死の実施件数は2002年の約1,900件から、2022年には約8,700件に増加した。20年で約4.5倍になった計算だ(出典:RTE年次報告書2022)。

これをどう読むかは、立場によって異なる。「抑圧されていた患者の意思が適切に実現されるようになった」という見方と、「ハードルが下がりすぎた」という懸念が並存している。

厳格な要件と実際の運用

法律が定める要件は厳しい。主なものを挙げると、患者が耐えられない苦しみを抱えていること、回復の見込みがないこと、患者が繰り返し明確に希望していること、少なくとも1人の別の医師が独立した意見を述べること——などが条件だ。

ただし「耐えられない苦しみ」は身体的なものに限らない。精神疾患(うつ病、人格障害など)や認知症初期の患者への適用も増えており、これが倫理的議論の焦点になっている。

認知症への適用という難題

認知症患者は、病気が進行するにつれて意思表示が難しくなる。そこで事前に「将来このような状態になったときに安楽死を希望する」という書面(事前指示)を作成しておく方法がある。

しかし認知症が進んだ状態で、医師が「これが本人の現在の意思に合致しているか」を判断するのは極めて難しい。この領域での安楽死実施は件数が少なく、医師も慎重だ。

医師への心理的負担

法律が医師に求めるのは、患者の死に医療的に関与することだ。これは多くの医師にとって、医療の本来の使命との緊張をはらむ。実際、安楽死の申請を断る医師も多く、「安楽死に協力する医師」への集中が問題になっている。

CLEVSというオランダの安楽死支援センターは、かかりつけ医が断った場合の受け皿として機能しているが、待機が生じることもある(推定)。

日本との比較で見えること

日本では安楽死は合法ではなく、緩和ケアの充実が主流の方針だ。オランダとの比較は「どちらが正しいか」ではなく、「死の選択権をだれがどう持つか」という問いを浮き彫りにする。

オランダに住む日本人の中には、この制度を「怖い」と感じる人と「こういう選択肢があるのは安心」と感じる人が混在する。どちらの感覚も正直なものだ。

在住20年を超えるある日本人は「最初はショックだったが、今は終末期に関する話をオランダ人の同僚と普通にできる。日本ではタブー視されているこの話題を普通に話せるのは、むしろ健全かもしれない」と話す。

制度の是非より、「死について語れる社会かどうか」——その差がオランダ在住の日本人には意外と大きく感じられるかもしれない。

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