オランダ料理の実態——「食べ物がまずい国」という評判は本当か
「オランダ料理はまずい」という定評の背景と、実際にオランダで何を食べているのかを解説。多様なエスニック料理・チーズ文化・インドネシア料理の影響を紹介します。
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ヨーロッパの中でオランダの食は「まずい国」として半ば公式に扱われることがある。フランス人もイタリア人もそう言う。だが3年以上アムステルダムで暮らした人間に聞くと、答えが少し変わってくる。
「オランダ料理」とは何か
まず「オランダ料理」の範囲が狭い。代表的なものを挙げると:
- Stamppot(スタンプポット):じゃがいもと野菜をつぶし混ぜた料理。ロクフォールやスモークソーセージと一緒に食べる
- Erwtensoep(エルウテンスープ):エンドウ豆の濃厚なスープ。冬の定番
- Haringen(ニシン):生の塩漬けニシンをそのまま食べる。屋台で立ち食いが定番
- Stroopwafel(ストロープワッフェル):薄いワッフル生地に黒糖シロップを挟んだお菓子
確かに、日本・フランス・イタリアのような「外で食べてうまい料理文化」は薄い。オランダ料理の中心は家庭料理で、外食産業向けに発達した料理ではない。
インドネシア料理という宝
オランダに来て多くの日本人が驚くのは、インドネシア料理の質の高さだ。オランダは17世紀から数百年にわたってインドネシアを植民地支配した歴史を持つ。その過程でインドネシア料理がオランダ文化に深く根ざし、今では全国に数千店のインドネシア・スリナム料理店がある。
Rijsttafel(ライスタッフェル)はオランダのインドネシア料理の名物で、ご飯と10〜20種類の小皿料理を一度に楽しむスタイルだ。アムステルダムには評判の良いインドネシア料理店が多く、現地在住者にも人気がある。
多様なエスニック食文化
アムステルダムはモロッコ・トルコ・スリナム・中国系の移民が多く、それぞれの料理文化が根付いている。Albert Cuypstraat(アルバート・カイプ市場)周辺のDe Pijpエリアはエスニック料理の密集地帯で、5EUR以下で腹いっぱい食べることも難しくない。
チーズの国としての誇り
オランダのチーズ——エダム・ゴーダ・レダール——は世界中に輸出されるほどの産業だ。スーパーのチーズ売り場の品揃えは圧倒的で、熟成度・タイプ・産地別に数十種類が並ぶ。
アムステルダムのAlkmaar・Gouda(ゴーダ)ではチーズ市(kaasmarkt)が観光の目玉になっていて、伝統的な競売の様子を見られる。
結論:自分で組み合わせる食文化
オランダ料理単体を求めると物足りないかもしれない。しかしオランダ人は「料理文化」よりも「食を楽しむ文化(gezellige maaltijd)」を重視する。誰かと囲むテーブル・ゆっくりとした夕食の時間・チーズとワインの組み合わせを楽しむ態度——これがオランダの食文化の本質に近い。
「料理の質」より「食卓の雰囲気」に価値を置く社会だ、と考えると評判のギャップが腑に落ちる。