オランダの医療「まずかかりつけ医に電話」の壁と付き合い方
オランダでは専門医に直接かかれない。まずかかりつけ医(huisarts)に相談し、紹介状をもらう必要がある。この仕組みの利点と、在住日本人が感じるもどかしさを解説する。
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オランダに来て最初に驚く医療習慣の一つが「専門医に直接かかれない」ことだ。皮膚科に行きたい、整形外科に行きたい、眼科に行きたい——でも直接行っても診てもらえない。まずかかりつけ医(huisarts、ホイサルツ)に電話し、状況を話し、紹介状を書いてもらう必要がある。
「電話で診断する」文化
かかりつけ医のクリニックに電話すると、まず「アシスタント(doktersassistente)」が対応する。症状を聞き、その場で「来院が必要か」「自宅療養でよいか」「その日に来るか、後日来るか」を判断する。
この「電話トリアージ」は、クリニックへの不必要な来院を減らすための仕組みだ。軽症なら電話口でアドバイスをもらい、薬局で薬を買うよう言われることも多い。
日本人にとって最初のハードルはオランダ語だ。電話口での会話はゆっくり話してもらいにくく、英語対応を明示していないクリニックもある。
登録制の壁
オランダのかかりつけ医は「自分の担当エリアに住んでいる患者を登録制で受け付ける」仕組みだ。新しい地域に引っ越した場合、まず近所のかかりつけ医クリニックに登録(inschrijven)する必要がある。
人気クリニックは満員で「今は新規患者を受け付けていない」と断られることもある(推定)。登録できないと、急病でもかかりつけ医がいない状態になる。引っ越し直後の登録作業は優先事項だ。
夜間・休日は「ハイサルツポスト」へ
夜間や週末に緊急ではないが診てほしい場合は、地域の「ハイサルツポスト(huisartsenpost)」が対応する。救急(緊急)ではなく、かつかかりつけ医が診療時間外の場合の受け皿だ。
本物の緊急(生命危機)は救急車(112)か病院の救急(spoedeisende hulp)だ。
専門医紹介の実態
かかりつけ医が「専門医が必要」と判断したら紹介状を書く。ただし専門医への紹介も「すぐ診てもらえる」わけではない。待機が数週間〜数ヶ月になることもある(推定)。「早く治したいから私費で専門医に直接かかりたい」という場合、プライベートクリニック(自費診療)に行くという選択肢もあるが費用が高い。
在住日本人への実践的アドバイス
オランダの健康保険(zorgverzekering)は加入が義務付けられており、月100〜150EUR程度(推定)の保険料を支払う。自己負担分(eigen risico)として年間385EUR(2024年基準、出典:オランダ政府VWS)を超えた分から保険が適用される。
「軽症なら薬局の薬剤師に相談する」という選択肢もある。オランダの薬剤師は処方箋なしで買える薬の知識が豊富で、軽い症状の相談にも乗ってくれる。かかりつけ医に電話しても「まずこれを試して」と言われることが多いので、薬局で事前相談する方が手っ取り早いケースもある。
日本の「いつでも専門医に直接かかれる」医療とは別の合理性が、オランダの医療設計にはある。慣れるまで時間はかかるが、仕組みを理解すれば使いこなせるようになる。