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文化・社会構造の分析

コーニングスダフ(王の日)の蚤の市:オランダ最大の「民主主義的商売」

4月27日、オランダ全土がオレンジに染まる王の日。この日だけ許可なしで路上販売が解禁される。蚤の市が映し出すオランダ的資本主義の素顔を読み解く。

2026-06-03
コーニングスダフ王の日蚤の市オランダ文化

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4月27日、アムステルダムのある運河沿いを歩くと、道幅いっぱいにブルーシートが広げられ、子どもたちが古いレゴブロックや絵本を並べて売っている。隣では中年男性がビンテージのレコードを値切り合戦の的にしている。老人は古着を1EURで売り、観光客がその横で写真を撮っている。

これがコーニングスダフ(Koningsdag)、王の日の風景だ。

なぜこの日だけ路上販売が許可されるのか

オランダでは通常、路上や公共の場での販売には許可証が必要だ。ただし王の日だけは例外。市民だれもが申請なしで「フリーマーケット(vrijmarkt)」を開ける。

この制度は1885年の女王の日(Koninginnedag)まで遡る。当時の女王ウィルヘルミナの誕生日を祝う国民的祭典の中で、自然発生的に路上販売が始まった。それがいつしか「この日は何でも売っていい」という慣習になり、法的に追認された。

王の日が4月27日なのは、現在の国王ウィレム=アレクサンダーの誕生日だ。前の女王ベアトリクスの退位(2013年)を機に名称も変わった。

経済規模は推定数億ユーロ

この日のフリーマーケット全体の売上は、全国合計で数億EURに上ると推定されている。信頼できる公式集計はないが、アムステルダム市内だけで数十万人が参加するイベントとして、その経済効果は無視できない。

面白いのは、参加者の多くが「商売」を目的にしているわけではないことだ。「家に積み上がった不用品を片付けながら、ビールを飲みながら楽しむ」というスタンスが本来のトーンにある。商業主義とゆるい祝祭感が共存している。

子どもたちの「初めての商売」

特徴的なのは子どもの参加だ。親に連れられた5歳の子が、自分のおもちゃを0.5EUR(約80円)で売る。客と値段交渉をする。釣り銭を計算する。これが多くのオランダ人にとって最初の「商売体験」になる。

オランダが「貿易国家」「商人の国」と呼ばれるのは、17世紀のVOC(東インド会社)時代から続く歴史的イメージだが、こういった幼少期からの実践が文化として再生産されている面もある。

「オレンジ」の政治性

王の日は国民がオレンジ色の服や帽子をつけてパーティーをする祭りでもある。オレンジはオランダ王家(オラニエ家)の色だ。ただし在住日本人が観察すると、多くの参加者にとって「王室への敬意」より「パーティーをするためのきっかけ」という意識が強いように見える。

実際、王の日には王室への批判的な意見を持つ人も普通に参加する。政治的な主張を伴う祝典ではなく、「とりあえず外に出て飲んで売って買う日」として機能している。

翌日の清掃問題

祭りの後、アムステルダムの運河やコンクリートは空き缶とゴミで覆われる。翌朝、大規模な清掃が行われるが、それも一種の年中行事だ。「汚す権利と片付ける責任」のセットとして社会が了解している。

この祭りを一度でも経験すると、オランダ社会の「ゆるさと秩序」が同居する感覚が少し具体的につかめる。規則は多いが、特定の日には壊れる。そのバランス感覚がオランダらしい。

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