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Marktplaats(マルクトプラッツ)——オランダ人の倹約精神が作った中古品文化

オランダ最大のオンラインマーケットプレイスMarktplaatsは月間訪問数900万人。中古品売買が日常に溶け込む文化とその使い方を解説。

2026-05-03
Marktplaats中古品倹約フリマオランダ文化

この記事の日本円換算は、1EUR≒160円で計算しています(2026年5月時点)。為替は変動するので、現地通貨(EUR)の金額を基準にしてください。

オランダ人の同僚が新しい自転車を買った、と言うので見せてもらった。「80EURだった」と嬉しそうに言う。新品ではない。Marktplaatsで買った中古だ。オランダでは、これが普通だ。

Marktplaatsはオランダ最大のオンライン売買プラットフォームで、月間約900万人が利用する。人口1,770万人の国で約半数がアクセスしている計算だ。日本のメルカリに相当するが、歴史はずっと古い。1999年に設立され、2004年にeBayが買収している。

何が売られているか

Marktplaatsには文字通り何でも出品される。自転車、家具、ベビーカー、楽器、車、ペット、不動産、求人——カテゴリ数は数十に及ぶ。常時約1,200万件の出品がある。

最も取引が活発なのは家具と自転車だ。引っ越しの多いオランダでは「家具は次の住人に売る」のが当たり前で、IKEAの家具がほぼ半額で流通している。引っ越しの際に前の住人からキッチンの食洗機ごと買い取るケースもある。

値段交渉が文化

Marktplaatsの出品には「Bieden(入札・提案)」というオプションがある。出品者が提示した価格に対して、購入希望者が「この値段でどうですか」とメッセージを送る。

この交渉がオランダ人は好きだ。100EURで出品されているテーブルに「70でどうですか」と送り、「85で」と返され、「80で」と落ち着く——この一連のやり取りが楽しみの一部になっている。

日本人の感覚だと値引き交渉は気が引けるかもしれないが、オランダでは「指定価格で即買い」する方がむしろ珍しい。遠慮なく値段を提示して構わない。ただし、あまりに非常識な値引き(半額以下を提示するなど)はブロックされることもある。

オランダの倹約文化

オランダ人の倹約ぶりはヨーロッパでもよく知られている。「Going Dutch(割り勘)」という英語表現があるくらいだ。ケチという意味ではなく、「不必要な出費を避ける合理性」と捉える方が近い。

この倹約文化とMarktplaatsの相性は抜群だ。「新品を買う前にまずMarktplaatsで中古を探す」のがオランダ人の行動パターンとして定着している。高所得者でも普通にMarktplaatsで中古を買う。恥ずかしいという感覚はない。

背景にはカルヴァン派プロテスタントの影響もあると言われている。質素・倹約・勤勉を美徳とする宗教的伝統が、世俗化した現在でも消費行動に残っている。「新品を買える余裕があるのに中古を選ぶ」のは、むしろ賢い消費者としてリスペクトされる。

使い方のコツ

引っ越し時が狙い目: オランダの引っ越しは6月末〜8月末に集中する。この時期はMarktplaatsに大量の家具が出品されるため、選択肢が広がる。逆に自分が売りたい場合は需要の高い9月に出品すると売れやすい。

受け取りは対面が基本: Marktplaatsは「ophalen(取りに行く)」での取引が多い。出品者の自宅や近くの公共の場所で現金と引き換えに受け取る。配送オプション(PostNL経由)もあるが、家具など大型のものは自分で取りに行くのが標準だ。

詐欺への注意: 「先に振り込んでください」という出品者には注意。Marktplaatsは直接取引が原則で、対面での現金払いが最も安全だ。公式の「Gelijk Oversteken」(安全決済機能)を使うと、商品到着確認後に支払いが完了する仕組みもある。

使い捨てにしない循環

Marktplaatsの存在は、モノの寿命を延ばす社会インフラとして機能している。メルカリが日本で急成長した背景と似ているが、オランダでは25年以上前からこの文化が根付いている。

引っ越しの多い駐在員にとっても、Marktplaatsは便利なツールだ。赴任時に中古で揃えて、帰任時に売る。家具を新品で買って処分するより合理的で、オランダ式の生活を体験する入口にもなる。

最初は「中古で家具を揃える」ことに抵抗がある人もいるかもしれない。だが一度使うと、新品にこだわっていた自分の方が不合理だったと感じるようになる。少なくとも、オランダにいる間は。

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