オランダのシェアリングエコノミー——自転車シェアだけじゃないオランダの共有文化
オランダでは250以上のシェアリングプラットフォームが稼働する。自転車・車・工具・料理まで、共有文化の構造とその背景を解説。
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オランダで「所有」は、思ったほど重視されていない。2018年の調査では国内に250以上のシェアリングプラットフォームが確認され、自転車・車・工具・料理・子ども服まで、あらゆるモノが共有の対象になっている。
自転車はサブスクで乗る時代
Swapfietsは2014年にデルフトの学生寮で生まれた自転車サブスクリプションサービスだ。月額16.90EUR(約2,700円)からで、パンクしても盗まれても翌日には代替車が届く。青い前輪がトレードマークで、アムステルダムの街を歩けばすぐに見つかる。
オランダ人にとって自転車は移動手段であって愛着の対象ではない——という割り切りが、このサービスを成立させている。日本で「自転車を借りて通勤する」と言うと驚かれるが、こちらでは合理的な選択として定着している。
隣人から電動ドリルを借りる
Peerbyは「近所の人からモノを借りる」アプリだ。電動ドリル、テント、プロジェクター、スーツケース——年に数回しか使わないモノを、半径数百メートル以内の誰かから借りる。ユーザー数は25万人を超えた。
このサービスが成立する背景には、オランダの住宅事情がある。アムステルダムの平均的な住居は50〜70㎡で、収納スペースに余裕がない。「持たない」は節約であると同時に、空間の最適化でもある。
車も個人間でシェアする
SnappCarはP2P型のカーシェアリングで、オランダ・スウェーデン・デンマークで20万人が利用する。自分の車を使わない時間帯に貸し出す仕組みで、借りる側は1日30〜60EUR(4,800〜9,600円)程度。レンタカーの半額以下になることも多い。
オランダ国内には14,000台以上のシェアカーが登録されており、そのうち77%がP2P型だ。都市部では「車を所有するコスト」が駐車場代だけで月150〜250EUR(24,000〜40,000円)かかるため、所有しない選択が経済合理性を持つ。
料理のシェアリングまである
Thuisafgehaald(家で受け取る、の意味)は、近所の人が作った料理を買えるプラットフォームだ。「今日カレーを多めに作ったので3人分あります」と投稿すると、近所の人が5〜8EUR(800〜1,280円)で買いに来る。
一人暮らしの高齢者と若い移住者が、料理を通じてつながる。機能的なサービスのように見えて、実態はゆるやかなコミュニティだ。
共有文化の根にあるもの
オランダのシェアリングエコノミーが活発な理由を「デジタルリテラシーが高いから」と説明するのは簡単だが、それだけでは足りない。
国土の4分の1が海面下にあり、水を管理するために何世紀も協力してきた歴史がある。ポルダーモデル(合意形成型の意思決定)は政治用語だが、「限られた資源をみんなで分ける」という感覚は生活にも染み込んでいる。
所有と共有の境界線は、文化によって引かれる場所が違う。オランダでは、その線がかなり「共有」寄りに引かれている。日本で言う「もったいない」に近いが、モノではなくスペースと時間に対して発動する感覚だ、と言えばイメージしやすいかもしれない。