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ニュージーランドのDIY文化——家の修理を業者に頼むと笑われる国

NZでは家の修理・リノベーションを自分でやるのが当たり前。DIYが国民的文化になった背景、Bunnings Warehouseの存在、法的な制限を解説。

2026-05-01
DIY住居文化リノベーション暮らし

この記事の日本円換算は、1NZD≒92円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(NZD)の金額を基準にしてください。

ニュージーランドで蛇口の水漏れを直すのに業者を呼んだと言うと、キウイ(NZ人の通称)の同僚はまず驚き、次に少し気の毒そうな顔をする。「YouTube見れば10分でできるのに」。これは冗談ではなく、NZの一般的な感覚だ。

国民的ホームセンター Bunnings Warehouse

NZのDIY文化を語る上で避けて通れないのがBunnings Warehouseだ。オーストラリア発のこのホームセンターチェーンはNZ国内に約50店舗を展開しており、週末のBunningsは家族連れで混み合う。

品揃えは日本のホームセンターと桁が違う。構造用木材、石膏ボード、配管パーツ、電気配線材料、屋根材——家を一棟建てるのに必要な資材がほぼ揃う。NZD 15(約1,380円)の蛇口パッキンからNZD 5,000(約46万円)の発電機まで、DIYの射程範囲は日本とは比較にならないほど広い。

毎週末にはDIYワークショップが無料で開催されている。タイル貼り、フェンスの建て方、デッキの作り方——参加者の大半は30〜50代の一般市民だ。

なぜDIYが根づいたのか

NZの住宅の約65%が木造だ。木造住宅は修繕の難度が比較的低く、専門工具がなくても手を入れやすい。鉄筋コンクリートのマンションが主流の日本では、壁に棚をつけるだけでも躊躇するが、木造住宅なら壁の中の構造が予測しやすい。

もう一つの要因は業者の人件費の高さだ。NZで水道業者(Plumber)を呼ぶとコールアウト料だけでNZD 80〜120(約7,400〜11,000円)、作業時間の時給がNZD 90〜150(約8,300〜13,800円)かかる。蛇口の修理に合計NZD 300(約2.8万円)の請求が来ることは珍しくない。しかも予約が取りにくい。人手不足のため、急ぎでない修理は2〜3週間待ちということもある。

そうなると「自分でやった方が早いし安い」という結論に至るのは自然だ。

法律で禁止されているDIY

ただし、何でも自分でやっていいわけではない。NZのBuilding Act 2004とElectricity Act 1992により、以下の作業は有資格者しか行えない。

  • 電気工事: コンセントの増設、配線の変更、分電盤の作業は全て登録電気工事士(Registered Electrician)のみ
  • ガス工事: ガス管の接続・修理はGasfitter資格が必要
  • 構造に関わる建築工事: 耐力壁の撤去、基礎の変更等はBuilding Consent(建築許可)が必要

違反した場合の罰金は最大NZD 200,000(約1,840万円)。保険も無効になるため、火災や水害が起きた場合に保険金が支払われない。

不動産価値とDIY

NZでは住宅の売買時に「オーナーがどこまで自分でリノベーションしたか」が査定に影響する。プロの仕事と素人の仕事は見る人が見ればわかる。建築許可が必要な作業を無許可でやっていた場合、売却時に発覚してトラブルになるケースがある。

逆に、丁寧なDIYリノベーションは物件の価値を上げる。キッチンのリフォームをNZD 15,000(約138万円)の材料費で自力でやり、物件価値をNZD 40,000〜50,000(約370万〜460万円)押し上げるという話は、NZの不動産フォーラムでよく見かける。

日本人がNZでDIYに苦戦するポイント

日本の賃貸住宅は「原状回復」が原則だ。壁に画鋲を刺すことすら気を使う環境で育った人間が、NZに来ていきなり「壁を塗り替えろ」と言われても戸惑う。

NZの賃貸契約では、退去時の壁の再塗装はテナントの義務であることが多い。つまり引っ越しの度にペンキを塗る。最初は面倒だが、慣れると「壁は自分の好きな色にしていい空間」という感覚に変わる。

Mitre 10やBunningsのスタッフは質問すれば丁寧に教えてくれるし、Trade Meには中古工具が大量に出品されている。NZD 50(約4,600円)でまともな電動ドリルが手に入る。

「自分の手で暮らしを直す」という感覚は、一度身につくと日本に帰ってからも残る。それがNZで暮らすことの、履歴書には書けない副産物かもしれない。

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