再生可能エネルギー85%の国でEVはどこまで普及したか|ニュージーランドのEV事情
ニュージーランドの電力の約85%は再生可能エネルギーで賄われている。EVの走行時CO2は実質ゼロに近い。しかしEV普及率は期待ほど伸びていない。その理由を分析する。
この記事の日本円換算は、1NZD≒92円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(NZD)の金額を基準にしてください。
ニュージーランドの電力の約85%は水力・地熱・風力で発電されている。つまり、EVを充電する電力自体がクリーン。ノルウェーと並んで「EVを走らせる意味が最もある国」の一つだ。
しかし、2025年時点でEVの新車販売シェアは約10%。ノルウェーの80%超と比べると、大きく出遅れている。
補助金の廃止
2022年まで、ニュージーランドにはClean Car Discountという制度があった。EVの購入時に最大NZD8,625(約79万3,500円)の補助金が出る仕組みだ。
しかし2023年12月、新政権がこの制度を廃止した。同時に、排出量の多い車への追加課税(Clean Car Fee)も廃止された。
補助金の廃止後、EVの新車販売は明確に減速した。価格に敏感なニュージーランドの消費者にとって、NZD8,625の差は大きかった。
中古EVの台頭
ニュージーランドの自動車市場は中古車が主力だ。新車の販売台数に対して、中古車の輸入台数は約1.5倍。日本からの中古車輸入が大きな割合を占める。
日本で使われていた日産リーフ(初代・30kWh)がNZD10,000〜15,000(約92万〜138万円)で販売されている。新車EVがNZD50,000以上することを考えると、中古リーフは「庶民のEV」として一定の市場を形成している。
ただし、初代リーフのバッテリー劣化は深刻な問題だ。10年落ちの車両では航続距離が100km以下になっている場合もある。片道50kmの通勤で充電の心配をしなければならないのは、実用上のストレスだ。
充電インフラの課題
オークランドやウェリントンなどの都市部ではChargeNetやBP Pulseの急速充電器が増えているが、地方の充電インフラは薄い。南島のウェストコーストや内陸部では、100km以上充電スポットがないエリアもある。
ニュージーランドは「ロードトリップの国」だ。週末に数百kmドライブして国立公園に行くのが普通のライフスタイル。長距離走行と地方の充電インフラの不足は、EV普及の大きな壁になっている。
RUC(Road User Charge)
ニュージーランドではガソリン車は燃料税で道路維持費を負担しているが、EVはガソリンを使わないためRUC(Road User Charge)を支払う。2024年から完全適用され、1,000kmあたり約NZD76(約6,992円)。
年間15,000km走行する場合、RUCは約NZD1,140/年(約10万4,880円/年)。燃料費ゼロの代わりにRUCがかかるため、ガソリン車との総コストの差は思ったほど大きくならない。
それでもEVの合理性
電気代は1kWhあたり約NZD0.30(約28円)。EVの電費が6km/kWhとすると、100kmあたりNZD5(約460円)。ガソリン車が100kmあたりNZD15〜20かかることを考えると、燃料コストの差は明確だ。
自宅充電ができるなら、毎朝満タンで出発できる。ガソリンスタンドに寄る必要がない。この「毎日充電して使う」スタイルに合えば、EVのメリットは確実にある。
再エネ85%の電力でEVを走らせる。環境面での合理性は世界トップクラスだ。あとは価格と充電インフラが追いつくかどうかの問題だ。